●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.86 ●▲■
    発行日:2006年 9月19日(火)
 ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com


------------------< 目 次 >------------------

●▲■イタリアの「カデルボスコ」、ポンプのない醸造所●▲■

 ●▲「日本ワインを愛する会」にて辰巳琢郎さんとの話から
 ●▲フランチャコルタにはためく日本国旗
                  (text:喜多常夫)

eアカデミー資料●1▲「重力式レイアウトのワイナリー」
ご紹介アイテム●2▲ragazziniのチューブポンプ
ご紹介アイテム●3▲葡萄収穫のための背負子


末尾に記載→   +++ 求人情報 +++


●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■

イタリア・フランチャコルタにある「カデルボスコ」という、
優れて「哲学的」あるいは「夢想的」ワイナリーについては、
昨年暮れに訪問して以来いつか書こう思っていたが、忙しさにまぎれていた。
それが先月、ひょんなことで甦って、この一文を書いている。


- - - - - - - - - -

先月大阪で、「日本ワインを愛する会」の会合に参加した。
東京中心に活動してきた会で、大阪では初めて開催との事。
会長の大塚謙一さんはこられていなかったが、副会長の辰巳琢郎さん(俳優)、
理事の山本博さん(弁護士、ワインに関する著作多数)など、
著名な方が参加されている。

勿論、全国の多くのワイナリー関係者も来られていて、
いまや世界レベルに比肩できる美味しい日本ワインとともに話は尽きなかった。

さて、辰巳さんである。
過去の東京の会合でもお見受けしたが、いつも回りに人垣ができる人気俳優ゆ
え、
話すチャンスが無かった。
今回もテレビカメラが付いて回っていたのだが、
山本さんに紹介していただいて始めて名刺交換をした。

女性たちが取り囲んでいたので多くをお話できなかったが、私が
「去年イタリアのカデルボスコに行ったら、辰己さんが来たと言ってましたよ」
というと、間髪をいれず
「ああ、あのタンクが上下する、、、」と言われた。

会も終わり頃ゆえ相当ワインも入っていたと思うが、
即座にタンクのことを言われたのに驚いた。
設備のことなど専門外なのによく見ておられる、鋭い方だと感心した。


- - - - - - - - - -

このメルマガの読者の9割は酒類製造業の方だが、
皆さんの醸造所・蒸留所には何台ポンプがあるだろうか?
清酒にしろ、焼酎にしろ、ビールにしろ、必ずポンプを使っていると思う。

無論のことワインでも必ずといっていいほどポンプを使っている。

しかし、近年になって、
「ポンプを使わない醸造プロセス」
に真剣に取り組んでいるワイン醸造家が出現しはじめている。

液体を扱っている工場でポンプを使わないことは、
仮に意識はあっても実践はとても難しい。

完全に実施しているワイナリーは世界にいくつもないのではないか。
が、件のカデルボスコは、醸造プロセスに一台もポンプを使っていない。

ポンプがない、という本論にいくまでに、順を追って話そう。
カデルボスコは実に驚くべきワイナリーであった。


- - - - - - - - - -

●■ 畑:
葡萄は1m角の碁盤の目(樹間・畝間とも1m)で植えられているので、
ヘクタール当たり10,000本。

後述するが、フランチャコルタDOCGでは
「収量制限ヘクタールあたり10トン(10,000Kg)」、
となっている。すなわち、規則上、
「1本の葡萄の木から1キロ以下しかとらない」ことになる。
実際にはさらに少なく、1本から700〜800gを収穫(!)といっていた。

たしか100ヘクタール以上、ときいたと思うが、見渡す限りの葡萄畑。
北部イタリア独特の、小さい周波数で繰り返す波のような丘陵の葡萄畑、
その中に、忽然とカデルボスコの近代的醸造所が出現する。
醸造所の屋根も、丘陵に合わせたのか波打っているのが印象的。

●■ 冷却室:
醸造所側面に海上コンテナのような扉がいくつかある。
これは収穫した葡萄をすぐに収容して冷却する部屋だそう。
一気に温度を下げると葡萄にストレスを与えるので、5℃づつ下げる。

もちろん収穫してから醸造開始まで日を置く事などしないのだが、
搾るジュースの品質確保のためだという。

分野が違うが、新潟の八海山さんの新工場を想起した。
白米の受け入れサイロ室があるのだが、
貯蔵中に湿度(水分含有量)を所定の値になるよう管理して、
目標値になってから洗米・浸漬にかかるのだそうだ。

●■ 建築:
遠目には一見大きな平屋に見えなくもないが、じつは2層構造の工場。
最近新築したらしい。
丘陵斜面を利用しているので2層とも地面に接しているのだが、
仮にここでは、地上、地下と書く。

●■ 巨大タンク:
地上、地下とも天井高さは10mくらい有りそうだったが、その2層を突き抜けて、
屋内に設置される、3000ヘクトリットルの巨大タンク。
(45万本分とも言っていた、計算が少し合わないが。いずれにせよ巨大)

同じヴィンテージイヤーの味が均一であることを保証するために、
当該年度のワインはいったんすべてのこのタンクに入れる由。

この手のものはボルドーのシャトーラツールでも見たが、
あちらは形の見えない地下タンクだった。
屋内の吹き抜けに設置されているのは圧巻。

●■ 珍妙な小型タンク:
直径と高さの比率が変えてある小型タンクが沢山並んでいる。
人の背丈くらいのもある。
太短いタンクもあれば、高さが直径の10倍くらいある珍妙なタンクもある。

ベストの醸造条件を探るために各種の比率を試している由。

赤のかもしタンクであれば、
果帽(浮いた葡萄の皮)の影響の考え方で直径高さ比を変えるのはわかるが、
どうやら、
「酵母の気持ちになってみればどのくらいの容積や深さが良いか」、
といった掘り下げたレベルの話らしい。

●■ 上下するタンク:
さて主題の設備、エレベータで上下する2基のタンクである。
容量はメモし忘れたが、結構大型であった。
50ヘクトリットル以上はあっただろう。

地上階の仕込みから始まって、
醸造プロセスに伴って下階(地下)に降りてきたものは、
普通ならポンプで次工程へ送られとことろである。

が、カデルボスコでは醸造にポンプをつかわない。
ワインはタンクごと上の階にもどされ、また重力で下に降りてくる。

ワインは、その醸造工程で、
「一度もポンプでかき回されることなく」つくられるのである。

表現が穏当を欠くかもしれないが、
「バージンの花嫁の如く生み出されたワイン」といえるかもしれない。

カデルボスコのワインメーカー(醸造技術者)氏いわく、
「ポンプはワインにストレスを与える。
ポンプを廃止することで品質は明確に上がる」

●■ 床はステンレス:
地下にある壜内二次醗酵スパークリングワインの充填室など、
びん詰め室の床はステンレスタイルを使っている。
サニタリーを徹底するのは世の流れだが、
ステンレスの床タイルを使用、というのはあまり聞いたことがない。

●■ 充填設備:
スティルワインの充填機は、KHSのロングノズル。
「KHS」はビールではクロネスと並んで有名なドイツの大手充填機メーカーだ
が、
私はワイナリーで見るのは初めてである。特注したのではないだろうか。

しかも「ロングノズル」。
(長いチューブを壜内に挿入して壜底からゆっくりと充填。
短いノズルで上から壜内壁に沿って高速充填するのが飲料業ではアタリマエだ
が、
ロングノズルだと液にストレスがかからないし、酸化リスクも最小限となる。
勿論、充填前に不活性ガスで壜内を置換する装置も付いている。)

コルク栓の供給機の所に見慣れない装置が付いているのでたずねると、
「良いコルクを使用していても、コルクには「ス」(虫食いのような小孔)があ
る。
画像検査装置でコルクの両端面を見て、
ベターな方が接液面になるように上下を選ぶ装置」だそうだ。

こんなアイデアは、いったい誰が考えつくだろう!
(思わず当社でも作ってみようか!と思った。)

●■ 犀(サイ)、ヘリポート、彫刻、そして、日本国旗!:
このあたりは、下記e-アカデミーの資料を参照のこと。

特段のつてもなく、eメールでコンタクトした個人ビジターのために
日本国旗を高々掲揚して待ってくれていたワイナリーは、初めてである。
光栄であり、また身の引きしまる気持ちであった。

●▲■ ご紹介情報その1:e-アカデミーに新規追加 ●▲■
「グラビティー(重力式)レイアウトのワイナリー」ed.5
http://www.kitasangyo.com/e-Academy/wine/gravitylayout_ed_5.pdf


「ポンプを使わない」=「グラビティー(重力式)レイアウト」。
醸造所内は撮影禁止なので、外観写真のみだが
5ページ目にカデルボスコを載せていて、犀の写真もある。

なお、カデルボスコではないが、
外誌に紹介されたエレベータ式タンク(小規模だが)の写真もあるので参考に。


- - - - - - - - - -

ワイナリーに限ったことではないが、
醸造所を設立する人は誰も、ある哲学や夢を持って始める。
が、それを実現することはとても難しい。

何事につけ夢半ばさえ難しい、というのが人生の常である。

趣味ではない、何しろビジネスである。
金儲けが出来なければ回っていかない。

カデルボスコは、
畑や醸造に対する思想、規模、設備があまりにも「飛びぬけ」ていて、
ビジネスとして成り立つのか、
投資・回収というスキームでこのようなワイナリーが出来るものか
疑問に思うほどだが、現にそれを実現しており、
かつ市場でも確固とした名声を築いている。

世にも稀な「哲学」と「夢」を実現させたワイナリーであると思った。


●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■


■参考情報:「カデルボスコ」について
Ca’del Bosco、たぶん、森の家、という意味。年産約100万本の規模。
http://www.cadelbosco.it/


■参考情報:「フランチャコルタ」について
イタリア北部、ミラノの東のワイン産地。
特に壜内二次醗酵のスパークリング(イタリアで言うところのスプマンテ)で有

で、近年、フランスのシャンパーニュ以上に評価が高まってきている。
かつ、フランチャコルタはスティル(ガスなし)ワインもすばらしいのが良い。

シャンパーニュでは
「収穫量制限ヘクタールあたり16トン、熟成期間12ヶ月以上」
だが、驚くべき事にフランチャコルタDOCGでは
「収穫量制限ヘクタールあたり10トン、熟成期間25ヶ月以上」
という、2倍X2倍で4倍くらい厳しい自己制限をかけている。

世界市場でシャンパーニュとの競争に勝ち残るための地域戦略だろうが、
実際にやってしまうイタリア人気質には頭が下がる。

「カデルボスコ」のほか、日本ではエノテカさんが力を入れている
「ベッラビスタ」(これも実にすばらしいワイナリーであった)が有名だが、
ほかにもきら星のようなワイナリーがいくつかある。


■お断り:辰巳琢郎さんの名刺によれば、
正しくは琢郎の琢という字の、つくりの中に点が入るのだが、
コンピュータに該当の字が入っていないので通常の琢の字で書かせていただい
た。

●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■

さて当社商品のご紹介です。


●▲■ ご紹介アイテムその2:ROOTSディビジョン ●▲■
ラガツィーニの「チューブポンプの適応事例」ed.2
http://www.kitasangyo.com/e-Academy/wine/peristalticpump_ed_2.pdf


カデルボスコで、実はポンプを見た。
ラガツィーニのチューブポンプが数台置いてあった。

「ポンプがあるじゃない」というと、
「あれは殺菌洗浄液だけにつかう」との返事。

チューブポンプ(peristaltic pump)はワイン業界では最先端であるが、
洗浄にまでチューブポンプを使う必要があるのか、
セントリフューガルポンプでもいいのでは、と思った。
しかしそのときの私は、英語で言うところの
"kid in a candy store" 状態、
まわりに興味深い設備が多すぎて、詳しくは聞かなかった。

たぶん「構造がシンプル」なことが決め手なのだろう。

ステンレス崇拝者には、
サニタリーの面でチューブを気にかける方もいるかもしれないが、
チューブをしごくだけ、弁もガスケットもなにもない、
というシンプルな構造は何にも勝ると思う。

低速運転するチューブポンプを実際に見ると実感できるが、
あたかも「桶でくみ上げるごとき優しい送液」で、
重力式レイアウトに最も近い効果の得られるポンプである。

●▲■ ご紹介アイテムその3:ROOTSディビジョン ●▲■
「ぶどう収穫のための背負子」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/Shoiko_wine_WOP.pdf

いよいよ、葡萄の収穫の季節。
こんなものも、やっています。

                  (text:喜多常夫)
__________________________


   +++ 求人情報 +++
      きた産業では求人を行っています。

特に「東京支店」勤務、ならびに関連会社「大晃印刷」(東京)勤務では
        近日求人誌にも広告を出す予定。
   そのほか大阪・奈良の各部門でも随時求人をしています。

 詳しくは下記ウェブサイトの「キャリア採用」をご覧ください。
   http://www.kitasangyo.com/Saiyo/Saiyo-kita.htm

__________________________

●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」

http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html

2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
__________________________


●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■ ●▲■


紹介商品に関するお問い合わせは、営業部まで。
西日本担当:大阪営業部
tel.06-6731-0251 mailto:osaka@kitasangyo.com
東日本担当:東京営業部
tel.03-3851-5191 mailto:tokyo@kitasangyo.com

__________________________

●本メールがうまく表示されない場合  ●登録内容の変更や、
配信停止希望の場合  ●メルマガに関するご意見・ご要望など、
は、メールアドレス:mailto:info@kitasangyo.com まで 。
__________________________

このメルマガは、「ご登録いただいたお客様」、
及び「当社営業担当で登録させていただいたお客様」に、
お届けするサービスです。
ご要望があってもお届けできない場合がございます。

発信専用アドレスから送付しております。このアドレスに返信
いただきましても回答できませんので、予めご了承ください。

__________________________

記載された記事を許可なく転送・複製・転載することを禁じます。
Copyright 2002-2006. Kita Sangyo Co., Ltd. All rights reserved.
きた産業株式会社 ニューズレター担当:企画・開発グループ

__________________________