●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.311 ●▲■

発行日:2024年3月25日(月)
■ アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報 ■

発行:きた産業株式会社 
https://kitasangyo.com



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< 目 次 >------------------

●▲■ パッケージの方向性が違う、日本と欧米

● アメリカにて:「PETボトル入りミネラルW」のないサンフランシスコ空港
(2月の体験)
● 日本:「森永乳業がガラスびん製品を3月末で全廃」
                                                (3月のNHKニュース)
● EU向け:「ガラスびんは再利用されないが、サケの輸出は認められた」
                                                (3月の日経新聞)

text = 喜多常夫

ご紹介情報●1▲  「
DKプリントのラベル・カートン」(デザインレファレンスブック)
ご紹介情報●2▲  Tips for BFD 「洋樽市場の変遷と現状 - ワインの樽」
ご紹介情報●3▲  「日本のミード
蜂蜜酒の、(ほぼ)全ブランド



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日本と欧米でパッケージの方向性が違ってきているのが気になって、
今回はその事を書きます。

「脱プラ、省資源、リサイクル推進、環境対応」
という目的は各国共通ですが、その解釈や方向性が随分違う。

■アメリカ:●PETボトル代替え(脱プラ)でアルミ缶やボトル缶が増え、「製缶産業」が繁忙
●ガラスびんのカーボンFPは問題視されるが、ガラスびんに入ったプレミアム商品は好調で、
アメリカは(EUも)「ガラスびん産業」は堅調らしい(日本のガラスびん産業は大苦戦)

■日本:●ガラスびんが敬遠され、一部はPETボトルにシフトする傾向(脱プラに逆行)
●プラスチックについては「バイオプラ」利用が環境に良いという認知が高い
EUがめざす「再生プラ」は原料が一般流通しておらず、一部大手の利用が始まったばかり

■EU: ●2030年から、ガラスびんを含む包材について再利用かリフィルを義務付ける
現地でガラスびん再利用ができない清酒は禁輸対象になりそうだった。が、何とか回避(後述)
●プラスチックについては「バイオプラ」(=非石油)でなく、「再生プラ」の利用(=再利用)を規定

大まかに言えば、以上のような違いを感じています。
以下に、各国事情を少し詳しく書きます。

(前回の続きで、お酒の時代ごとの法則 「21世紀1Qの3法則」を書く、
 と予告しましたが、それはまた改めて書きます。)



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●▲■ アメリカにて:PETボトル入りミネラルWが、
まったく売っていないサンフランシスコ空港


先月2月にアメリカに出張した。

帰路はサンフランシスコ空港(SFO)から帰国したのだが、
空港のパスポートコントロールを通った後、水を買おうと思って売店に行くと
「PETボトル入りミネラル・ウォーター」がまったく売っていない(!)。

いや、ミネラルWはいくつもの売店で売られているのだが、
どの店も売っているのは、
日本でいう「ボトル缶」入り、または「紙パック」入りのミネラルWのみ。
世界中でおなじみのPETボトル入りミネラルWが全く売っていないのに驚いた。

最も多く販売されていたミネラルWの容器はボトル缶で、500~600ml。
価格は5~6ドル(750~900円)。
PETボトル入りミネラルWの3倍くらいの価格である。

このボトル缶は、日本で一般的な「DI缶」(アルミの肉厚が薄い)ではなく、
「インパクト缶」(アルミの肉厚が厚い=アルミの使用量が多い)。
キャップ口径は38mmが主流のよう。

「インパクト缶に水を入れて販売することが環境にやさしいのか?」
と、業界人としては疑問が先立つが、
アルミが厚いので水筒のように何度でも使える。
販売価格は高いが、空港内には給水ポイントがたくさんあるので、
飲み終わったら継ぎ足して、何度でも使える。

そして何より、「空きPETボトル」が出ない(=脱プラ)。
ボトル缶ならアルミ原料として再利用できる。



アメリカのアルミ容器の再資源化率は高くないだろうし、
マーケティング(あるいはプロパガンダ?)の産物のようにも見えるが、
それでも、ともかく、
PETボトルを減らすことは、個人的には賛成である。

加えて、価格が高いので、むやみに買わないの
良い。
購入量が減れば、包材使用量も減って環境負荷も減る。

ご存知の通り、国際線の飛行機には液体を持ち込めないが、
手荷物検査前にボトルを空(カラ)にして持ち込んで、
空港内の給水ポイントで水を入れている人は多かった。

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2月のアメリカ出張
は長旅で、KY州とCA州でホテルに12泊したが、
部屋に備え付けの水が「PETボトル」だったのは2泊だけ。
10泊は、「ガラスびん」、「ボトル缶」、「紙パック」のいずれかに替わっていた。

ガラスびんの場合は、必ず「リフィラブル(再充填可能)なびん」で、
回収して(
多くの場合ホテル内で)詰め替えて、ねじキャップをしたものだった。

もちろん、コーラや清涼飲料はPETボトル入りが主流だし、
街中ではPETボトル入りミネラルWが一般的だが、
アメリカでは、特に高級ホテル・シティーホテルやスポーツクラブ・ゴルフコースなどで、
敷地内で提供するミネラルWについては

「PETボトルは一切置かない」
「水はリフィラブルのガラスびんや、ボトル缶・紙パックで提供」
「無料給水ポイントがあります」

というスタイルが急激に増えている。

サンフランシスコ国際空港の国際線もそれにならった格好だ。
インパクトボトル缶に行くとは、善し悪しの判断が分かれるかもしれないが、
方向性を決めて一歩踏み出しているアメリカは、日本より進んでいると感じた。

羽田や関空でPETボトル入りミネラルWを販売させない事はできないだろう。




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●▲■ 「森永乳業がガラスびん製品を3月末で全廃」

<<以下、2024年3月8日のNHKニュースから(一部編集)>>

「ビンに入った飲み物の販売 森永乳業 2024年3月ですべて終了へ」

宅配や銭湯などでおなじみだった、ビン入りの牛乳や乳酸菌飲料など…。
森永乳業は、こうしたビン入りの飲料の販売を今月(3月)末で、
すべて終了することを明らかにしました。

宅配で取り扱う牛乳や乳酸菌飲料などビンに入った7品目の飲料について、
今月末ですべての販売を終了するということです。
銭湯や自動販売機での販売も終了するということです。
一部の商品は紙パックやペットボトルでの販売に切り替えるとしています。

ネット上でも、このニュースに惜しむ声が広がっていました。
「銭湯や温泉の後、腰に手をあてながらビンの牛乳を飲み干すのが、
最高のひとときなんだが・・・残念」
「あの口で感じる微妙なガラスの厚みを感じることができなくなるなんて」。

「各社で広がる脱「ビン」の動き」
ビンに入った飲料は、各社で取りやめの動きが続いています。
5年前には明治が「フルーツ牛乳」の販売を終了し、
3年前には小岩井乳業がすべてのビン入り商品を紙容器に切り替えました。
ビンの回収・洗浄にコストがかかることなどが理由です。
農林水産省によると、牛乳は、
「ビン入り」が全体の2.6%、90%近くが「紙容器」となっています。

「森永乳業が販売を終える理由」
森永乳業によりますと、会社では省資源化のためビンを再利用していますが、
客がビンを返却する手間がかかるほか、
ビンの回収や洗浄のための輸送やエネルギーの効率を見直したことなどが理由だとしています。
会社は、「市場環境やニーズなどを総合的に考慮し、
宅配サービスのリニューアルの一環として販売終了を決めた」としています。

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日本では消費者のガラスびん離れが急激に進む。

世帯当たりの人数が減り、高齢化が進む日本では、
「環境、省資源」より、「軽さ、利便性、小容量」にドライブされる。
「洗って再利用できる」というガラスびんの美点は忘却の彼方である。

ガラスびん産業は需要減で採算が悪化、
ガラスびんの値上げを繰り返し、それは益々ガラスびん需要を減少させる、、、
欧米の大手ガラスびんメーカーが取り組むような環境対応投資もしにくい、、、
という悪循環になっている。

一方、ガラスびん全体では需要減にもかかわらず、
酒造業界の方はご存知の通り、お酒のガラスびんは極端に不足している。

洗壜して再利用されるはずの「一升壜」さえ足りないのは、
ガラスびんの回収再利用システムが機能しなくなっている影響が大きい。
私は、灘酒の地元、西宮市在住だが、
飲み終えた一升壜は、ガラスびん回収の日にだす。
たぶん破砕されてカレットになるのだろう。
罪悪感があるが、近くにはリユースしてもらうために持参する店・場所がない。


20世紀後半で日本が確立してきた「洗って再利用するガラスびん」、
宅配牛乳びん、ビールの大・中・小びん、清酒・焼酎の一升壜は、
   21世紀の現代にこそ適合したシステム
  世界に誇るべきシステム
であるのに、衰退の一途、、、という残念な状態である。

一方、次に述べるように、EUは
2030年からガラスびんの再利用を義務付けようとしている。




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●▲■ EU向け:「ガラスびんは再利用されないが、サケの輸出は認められた」

<<以下、2024年3月15日の日経新聞から(一部編集)>>

「日本酒の欧州禁輸、瀬戸際で回避 現地ルール対応に盲点」

欧州連合(EU)が3月4日、
食品などの包装に関する新規制案から、日本酒を除外することで大筋合意した。

EUの「包装・包装廃棄物規制案」は、2030年以降、
飲料品や食品などを入れるびんや缶といった容器について、
再利用やリサイクル材の利用を事業者に義務づける法規則だ。

欧州の和食レストランなどで消費される日本酒の4合びんや一升びんを
現地で回収し、再利用すると膨大なコストがかかるため、現実的ではない。
びんの形状が欧州と異なるとの理由から事実上の禁輸となる事態は
寸前で回避された。

日本側の説得が奏功した形だが、薄氷の交渉劇は、
EU規制への対応の難しさも浮き彫りにした。

日本酒は土壇場で禁輸の事態を回避できたが、
和牛などの包装に用いる「多層フィルム」は規制対象になる可能性がある。
30年までにリサイクル可能なものに切り替えなければ輸出困難になる。


<<以下、2024年3月8日のJETROビジネス短信から(一部編集)>>

「EU、包装材のリサイクルや再利用、過剰包装禁止を義務付ける規則案で政治合意」

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は3月4日、
包装・包装廃棄物規則案に関して暫定的な政治合意に達したと発表した。

法案は、包装廃棄物のさらなる削減に向け、現行指令を改正し、
EU域内全域に直接適用される規則として欧州委員会が提案したもの。

レストランやカフェなどで消費する飲料・食品
ホテルの小分けシャンプーなどに使用される
  「使い捨てプラスチック包装材の禁止
輸送用包装材の最小限化要件、
再利用可能な包装材の利用率に関する飲料用や輸送用など包装用途別の目標値、
すべての包装材に
基準値以上のリサイクル可能性を課す要件、
プラチック包装材における
リサイクル済みプラスチックの最低使用要件など
多岐にわたる規制を新たに導入する。

今回の政治合意では、欧州委案の大部分を維持する一方で、
製紙や食品関係を中心に要件を一部緩和した。
まず、再利用可能な包装材の利用率に関して、
ワインや包装用段ボールなどを、法的拘束力を持った目標値の対象から除外した。
(注:この記事には、清酒(HSコード2206)が除外された、という記載はない)

現地報道によると、背景にはこれらの業界団体による重点的なロビー活動や
関連産業を有する一部の加盟国からの反発があったとされる。
法案は今後、EU理事会と欧州議会による正式な採択を経る必要がある。

なお、今回合意された法文案は公開されていない。



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以上の日欧のエピソードを並べてみると、
日本は欧米に後れを取っている、、、と危惧する。

EU
規制に関する個人的意見だが、
「日本酒のガラスびんは、規制対象の例外になってよかった」
で済ますのでなく、中期的には、
「日本酒のガラスびんも、EU内のリサイクルシステムに組み入れる」
検討・努力をすべきだと思う。

サケが、「少量のニッチ商品」でなく「世界商品」になるために必要だ思う。


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最後に追加で、日本が後れを取っていると感じる事例として、
BPA=ビスフェノールAのことを書いておきます。

BPAは、今ではEUや米国の多くの州で規制物質だが、
先鞭をつけたのはフランスとアメリカCA州で、2015年=10年ほども前。

以来、お酒の欧米への輸出では、
少なくとも接液
部のBPA不使用(あるいは、意図的添加無し)が求められる。
当社が生産するお酒のキャップについても、
BPA不使用の
自己宣言文の作成依頼や、
外部機関による
分析証明の提出依頼とても多い。

一方、日本国内で販売する場合は、
キャップのBPAの不使用の証明を求められることはない。
実のところ、国内で使用されるキャップや缶など
の塗料・プラスチック材料には、
今もBPAが含有される例は多い。
(日本でもBPA規制があるが、
お酒やビールなどのキャップ缶は対象外)

幸い当社では
20年ほど前からキャップのBPA不使用材料への仕様変更をすすめている。
加えて近年は、適合性の検証のため、外部機関に分析を依頼している
ただ、EU規制の適合性を証明できる分析機関は限られるし、
キャップの仕様ごとに必要なので、高額なコストと多大な手間がかかっている

そもそも、日本欧米同じ規制水準であればこんな手間は不要だろう、、、と思う
それに、
欧米より化学物質規制が緩い」という状態は、
生産者としては楽だが、日本人消費者の視点では不安を感じる。

BPAの対応を見ても、
日本は欧米に後れを取っているのではないか、、、と危惧する。


                        text = 喜多常夫



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さて、当社情報のご紹介です。



●▲■ ご紹介情報 その1  :アーカイブ情報 ●▲■
DKプリントのラベル・カートン」(デザインレファレンスブック)
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/DRB24_dkp.pdf


「株式会社DKプリント」は、きた産業のグループ会社です。
清酒、ウイスキー、クラフトビール醤油、焼酎など幅広い分野でお取引いただいています。
きた産業でも、ラベル、カートンのご注文を承ります。



●▲■ ご紹介情報 その2  :アーカイブ情報 ●▲■
Tips for BFD 「洋樽市場の変遷と現状 - ワインの樽」
https://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/tips-for-bfd/BFD_64.pdf

当社の「酒うつわ研究誌に掲載された、ワイン樽の資料。
昨年から
「有限会社オークバレルきた産業のパートナー企業となっています。
ワイン樽、ウイスキー樽、焼酎樽など、洋樽の事ならご照会ください。

新樽だけでなく、
シェリー樽、バーボン樽、有名シャトーで使われ
た樽、など
古樽」も独自の調達ルートを持っています



●▲■ ご紹介情報 その3  :アーカイブ情報 ●▲■
「日本のミード
蜂蜜酒の、(ほぼ)全ブランド
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/PDA_306.pdf

人類史上で、とても古い歴史のあるお酒である「ミード」。
近年、日本で新たに取り組まれる方が増えています。
資料作成時点で、わかる限りの全てのミード
のブランドを網羅した資料です。

パッケージ
だけでなく、
ミードの醸造設備も施工実績があります。ご照会ください。



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