●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.232 ●▲■
発行日:2017年7月26日(水)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

 

------------------< 目 次 >------------------

●▲■ 「パストライズ(低温殺菌)に関する小論」その2

  ●■ 日本の大手ビールでは、パストライズはほぼ消滅
■▲ 大手の(?)クラフトビール、世界の大手ビールはパストライズ
■▲ PUという考え方:ビールは15PU、清酒は52PU?

                      text = 喜多常夫

ご紹介情報●1▲半自動ビール充填機「BR V」
ご紹介情報●2▲自動ビール缶詰機「Beer Radix」「BRX」「BRZ」
ご紹介情報●3▲「ANALOX 炭酸ガスモニタリング(警告)システム」

 

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前回は、ワインの話、

 パスツールはワインでパストライズ(低温殺菌法)を発見したが、
現在のワインはほとんど低温殺菌を行なっていない

という話を書いた。

100℃以上の「高温殺菌」はパスツール以前に使われていた。
故に60-70℃でも「低温殺菌」と称するわけである。

 

今回は、ビールのパストライズについて書きます。

 

 

  ●▲■ 日本の大手ビール ●▲■

先月、年に一度の社員旅行で兵庫県三田に行ったのだが、
そのとき「キリンビール神戸工場」を見学した。
今年が工場竣工20周年だそうだ。

窓越しに、缶充填ライン(三菱重工製、2,000cph!)と
びん充填ライン(クロネス製)が見学できる。

広大で複雑なラインの流れを追うと、最終部分には、
「ウォーマー」はあるけれど「パストライザー」は見あたらなかった。

(注:パストライザー:
缶や壜に温水シャワーをかけるトンネル型の低温殺菌装置。
ビールは充填時は5℃程度だが、それを65℃程度まであげて殺菌、
高温のままだと品質劣化するので、常温まで冷却する。
ウォーマー:
5℃のまま箱詰めすると表面の露で箱が濡れるので、
20℃くらいまで温める装置。パストライザーと同じ構造だが小型)

 

日本の大手ビールは、いまやほとんど、
「加温殺菌なし」の「生ビール」。
大義(「フレッシュな味を届ける」)もさることながら、
実利(「エネルギーコスト節約」「設備コスト削減」)は大きい。

 

濾過技術や衛生管理水準の向上で、
サントリー、サッポロ、アサヒは90年代までに次々に「生」になった。
キリンの「一番搾り」は90年の発売時にすでに「生」だったが、
当時はまだ「ラガー」が主力で、これは低温殺菌していた。

大手ビールの中で
一番最後までパストライズしていたのは「キリン・ラガー」だったが、
1996年に全工場でパストライズを廃止した。
(見学したキリン神戸工場は、その後の1997年竣工)

 

キリンについていえば、その後、
2007年発売の「キリン・ザ・ゴールド」でパストライズを復活使用。
「苦味などの成分を残したまま製品化するため」
との説明だったので、
やはり、殺菌が必要な有用成分があるのだろう。

現在も「キリン・クラシックラガー」ではパストライズしているようだ。
(キリンのサイトによれば「昭和40年頃の味わいを、
当時と同じ熱処理製法でつくり出しました」とある。
個人的にはクラシックラガーの苦味は好きである。)

 

が、クラシックラガーは例外的であり、

   ■アサヒ・スーパードライ
■キリン・一番搾り
■サントリー・プレミアムモルツ
■サッポロ・黒ラベル

など、大手各社のメインブランドはすべて生ビール。

「生ビール」でありながら、
「常温流通可能」で賞味期限「充填後9か月」と、
パストライズ製品並みの流通条件が一般的。

さらに加えて、
「鮮度管理」「フレッシュローテーション」と称して、
店頭には充填後1~2ヶ月の新しい製品が並んでいる。

 

日本の大手各社の技術レベルと流通管理には驚く。

 

 

  ●▲■ クラフトビール ●▲■

小規模な地ビール醸造所の壜・缶製品は、
当然、パストライズなど行わない。
「殺菌しないフレッシュな味わいこそクラフトビール」
という考えには、共感者が多いだろう。

当然、その商品は、
「要冷蔵・賞味期間2週間」
など、短いシェルフライフが基本。

 

一方、中~大規模な地ビール醸造所の製品、
全国区でコンビニエンスストアなどに置かれる
「賞味期間6か月」
のクラフトビール(書いていないが常温流通可)では、
ほぼ、トンネルパストかフラッシュパストのどちらかを使用している。

(注:フラッシュ・パストライザー:
充填前に一旦温度を上げて、また充填に必要な低温に下げる装置。
当然ながら、びんと王冠、缶と缶蓋の殺菌が保証される前提。)

 

アメリカのクラフトビールでも事情は同じで
生産規模が大きい場合はトンネルパストかフラッシュパストである。
(アメリカの場合、大手でも「ボトルコンディショニング」
・・・残糖1%くらいでびん詰め、概ね半分がガスになる計算なので
0.5%(=2.53 GV)と、ちょうどよい炭酸ガス含有量になる、
うまくすれば溶存酸素がほとんどなくなるメリットもある・・・
というのも結構あるが。)

ある程度以上の生産量・流通範囲になれば
クラフトビールでは、
殺菌(または殺菌に代わる手法)が必要なのだろう。

 

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パストライゼーションに関する心配ごとは、
温度履歴による味の劣化である。

清酒では
●「壜燗殺菌すると味が安定する」
というが、ビールは逆で
●「加温による味の劣化」
を懸念する人も多い。

 

1995年に地ビールが解禁になったとき、
何銘柄かの地ビールで当社社内で加熱殺菌(その後冷却)し、
パストライズありとなしの比較官能試験をしたことがある。

素人の感覚では、
「翌日」「1週間後」で、ほとんど差を感じなかった
(パストライズしても劣化を感じなかった)。

一方、「3週間後」に試飲すると、
殺菌したほうが味がいい場合がほとんどだった。

ビールのタイプによってはパストライズで味が変わる場合もあるだろうが、
ろ過されたアメリカンラガーなどでは、ほとんど影響がないのだろう。
そして当然、賞味期間はまったく違う。

(なお、当時、風味の劣化は、
パストライズよりもむしろ、
衛生管理や、HAやDOの管理の水準に大きく依存するようだった。
クラフトビールでは、いまも事情は同じだろう。)

 

 

  ●▲■ 世界の大手ビール ●▲■

いろいろ見たなあ、と自分でも感慨深いが、
以下の大手ビール会社の缶詰め・壜詰めラインを見学したことがある。

 ■チェコの「ピルスナーウルケル」
http://www.kitasangyo.com/pdf/archive/world-alcoholic/Beer_DE&CZ_2014.pdf
■アメリカの「ミラービール」
http://www.kitasangyo.com/pdf/archive/world-alcoholic/miller.pdf
■アイルランドの「ギネスビール」
http://www.kitasangyo.com/pdf/archive/world-alcoholic/DublinReport.pdf
■中国の「燕京ビール」
http://www.kitasangyo.com/pdf/archive/world-alcoholic/yanjing_&_major_beer.pdf

 

以上のすべてのビール工場に、
「トンネルパストライザー」か「フラッシュパストライザー」があった。
(正確には、ギネスは、見学したダブリンには缶ラインはないのだが、
後述する通りトンネルパストライザー使用は確認。)

世界最大ブランドの「バドワイザー」は見たことがないが、
「ビーチウッド製法」と称して木片を浸漬しているくらいだから、
パストライズしているのではないか。

 

「生ビール主流」の日本の大手ブランドと違って、
海外の大手ブランドでは、
「殺菌ビール」が主流のように思う。

 

なお一方、例外もあって、(大手とはいえないかもしれないが、)
ベルギーでみたビール工場ではパストライザーはなかった。

 ベルギーの「デュベルビール」
http://www.kitasangyo.com/pdf/archive/world-alcoholic/belgian_beer.pdf

 

「びん内二次醗酵」のベルギービールは、
シュガービーツ由来糖分と酵母をタンクまたはインラインで壜詰前に均一に再添加、
壜詰後に定温室で2週間程度エージングさせてから出荷する製法。

シャンパーニュの製法と同じ原理。
(ただし滓は抜かないので、若干クラウディー)
パストライズなしで、賞味期間がきわめて長いビールになる。

 

例えば、
「ヒューガルデン」            1.5年
「オルヴァル」                5年
「カンティヨン・クリーク」    10年
など。

 

 

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アイルランドのギネスビールの研究所に行ったとき、
ウィジット・ボール入り缶ビールの殺菌についてこんな話を聞いた。

 「10年ほど前まで15PUだったが、
工場とサプライヤーの衛生水準の改善で今は7PU」

(注:「ウィジット・ボール」
ギネスビールの缶に必ず入っている、
窒素ガスを噴射する小さなピンポン玉のようなもの。
いわば異物なので、殺菌しないわけにいかないだろう。
なお、上記の話を聞いたのは10年前の2007年なので、
今は7PUから変わっているかもしれない。)

 

 

以下、ちょっと専門的なので、
興味なければ読み飛ばしてください。

 「PU」(Pasteurization Unit、「殺菌単位」)について:

 熱殺菌の効果は温度と時間で決まるが、
同じPUなら高温短時間と低温長時間で同じ効果、という概念。
一般的にビールの殺菌には「14PUから15PU必要」と言われる。

   PU=(殺菌時間)x1.393の(殺菌温度-60℃)乗

 すなわち60℃(華氏140度)をポイントにして、
それ以上の温度では1度刻みで、幾何級数的に、
殺菌単位が大きく(殺菌効果が強く)なる。

 たとえば、64℃なら1.393の4乗(64℃-60℃)で3.76。
15PUのためには3.98分必要であることがわかる。

 同じ計算法で15PUのためには、
66℃なら2.06分、68℃なら1.05分となる。
わずかの温度差で大きな時間差となる。

 

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清酒は、
火入れしない「生酒」も一定の市場を形成しているものの、
一般的には火入れ(パストライズ)する。

 

手元の書籍(少々古いが)で火入れの記述を見ると、こんな具合。

 

 ■記述1:「65℃23秒で、火落ち菌に限ると
生菌数は100億分の1となり殺菌は完全」(「改定醸造学」野白喜久雄ら)

 ■記述2:「60℃10分くらい保つと、火落ち菌の殺菌も、また酒質に変化を
与える酵素の破壊も完全となり、酒質は安定」(「日本酒」秋山裕一)

 ■記述3:「65℃10分保持が安全」(「灘の酒用語集」灘酒研究会、旧版のほう)

 

上記で一番きつい記述3「65℃10分」とすれば、
10x1.393(65-60)=52PUが清酒に必要であることになる。

ビールの必要単位14~15PUに対して、
清酒の52PUはとても大きい。

実際、清酒では、

  ▲酒温を上げて壜詰めする「加熱充填」では「65℃」
▲充填・打栓後加温する「壜燗殺菌」では「65℃10分」

を意識される方が多いだろう。

また、62℃や63℃は不十分であって、

  ▲「65℃必須」

と考えている人が多いように思う。

 

ワインもビールも「パストライズがなくなる傾向」であるのに対し、
清酒では「びん燗殺菌が高級酒を中心に増加する傾向」である。

スパークリング清酒の場合も、たとえガス圧が高くても
「びん燗殺菌」が一般的。

 

もちろん必要性があるわけだけれど、
実は資材や設備の技術面で確立されていないことが多く、
実務的には中々難しい・・・

といったことを、次回「パストライズ小論」その3で書く予定。

 

           text = 喜多常夫

 

 

 

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さて、情報紹介。
今回は、ビール関連の機材です。

 

 

●▲■ご紹介情報 その1 ROOTSディビジョン ●▲■
半自動ビール充填機「BR V」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/BFV.pdf

シリーズV(5)になって、
●入り味調整がタッチパネルで1ml単位で可能
●欠減が大幅に減少(1/5程度に)
と、大きく進歩。

古いシリーズIII(3)やシリーズIV(4)をお使いの皆様、
買い替えをお勧めいたします。

 

 

●▲■ご紹介情報 その2 ROOTSディビジョン ●▲■
自動ビール缶詰機「Beer Radix」「BRX」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/Beer_RadixIV_J.pdf
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/BRX_jpn_.pdf

メルマガ本文中に、
アメリカのミラー、アイルランドのギネスの話がありました。
これらの研究所に納入した機械です。

 

ボトル缶対応の「BRZ」もあります。
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/BRZ_JPN_ed01_1.pdf

 

 

●▲■ご紹介情報 その3 ROOTSディビジョン ●▲■
「ANALOX 炭酸ガスモニタリング(警告)システム」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/gas-lab/Ax60.pdf

炭酸ガス濃度が高くなる職場・店舗で
酸欠防止防止をはかるシステム。

醸造所、ビアパブなどの安全確保のため、
導入をご検討ください。

 

 

 

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