●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.227 ●▲■
発行日:2017年2月28日(火)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

------------------< 目 次 >------------------

●▲■ アメリカ政治の「予想外の展開」
●■ 100年前の予想外、「禁酒法」
■▲ 禁酒運動の系譜、禁酒法を生き抜いた企業
▲● 予想外の展開はこれからも、、、

                      text = 喜多常夫

 

ご紹介情報●1▲ 欠減が大幅改善、卓上ビール充填機「BF V」
ご紹介情報●2▲ 合成コルクから植物コルクへ「ノマコルク」
ご紹介情報●3▲ サケびん口規格のガラス栓「サケヴィノロック」

 

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アメリカの大統領選挙は「予想外の展開」だった。
大方の予想はクリントンさん(民主党)だったが、
予想外にもトランプさん(共和党)が当選。

トランプ大統領になってから連発される大統領令は、
世界中の耳目を集めている。
憂いている人がアメリカや世界で多い一方、
賛同する人も多いと伝えられている。

 

 

  ●▲■ 100年前の予想外、「禁酒法」

 

アメリカ政治の「予想外の展開」は今始まったことではない。
100年前にも「お酒に関する予想外の展開」があった、、、
という事を今回は書きます。

1920年から1933年まで全米で施行された、
「禁酒法」(英語では単に「Prohibition」-禁止-と呼ぶ)について。

 

 

今からちょうど100年前の1917年、
合衆国憲法を修正して、国中を「禁酒」にしようという法案が提出され、
なんと、上下両院で三分の二以上の支持で可決されてしまった。

 

トランプさんの場合「大統領令」なので署名すれば済むけれど、
こちらは「憲法の修正」である。

憲法修正には各州の批准が必要。
大方の議員は、実は、
「必要数の州の批准など到底得られない、憲法修正はない」と、
高を括って(たかをくくって)の賛成票を投じたようだ、と伝えられる。
(トランプさんに一票を投じた人の心理に似る?)

だが、案に相違して
1919年までに、成立に必要な四分の三以上の州が批准。
当時のウッドロウ・ウィルソン大統領(民主党)は拒否権を発動したが、
1919年に議会は再可決。
1920年に憲法修正第十八条「禁酒法」が成立した。

 

議員や州が禁酒に賛成したのにはいくつかの背景があったそうだ。

  当時は第一次世界大戦を戦った直後で、
「戦争をなくす」「民主主義の確立」といった道徳意識の高まりが
禁酒に結びついた、というのが要因の一つ。
(→反戦や民主主義と禁酒を関連付ける感覚は今では想像できない)

  大戦で戦った相手国の一つはドイツであるが、
アメリカの酒造業は、ドイツ系アメリカ人の会社が多かった。
(ビールの「バドワイザー」や、今やサントリー傘下の「ジムビーム」など)
禁酒支持の一票は、カイザー(ドイツ皇帝)打撃の一票、
という意識も要因の一つ。
(→メキシコからの輸入に関税をかける以上に、ひどい話に聞こえる)

  ちょうど女性参政権が認められる機運が高まっていた時期で、
議員たちは将来の女性票を意識した。
無記名投票だったら反対したかもしれないが、記名投票故、
女性の多くが支持していた禁酒に賛成した、というのも大きかったそうだ。
(→これは今でもありそうな話だ。因みに女性参政権が認められたのは、
アメリカ1920年、日本1945年。)

 

日本では、この1920年頃を含む、
明治30年代(日露戦争)から昭和10年代(第二次大戦)までの
30年間ほどは、酒税が国税の税収第1位となり、
「酒税が国を支えた」と言われます。

これは日本に限ったことではなく、
この時期、多くの国で酒税が主要税収源だったといわれる。
当時のアメリカでも酒税は大変重要であったはずですが、
その酒税がなくなることを承知で禁酒(道徳)を優先したわけだから、
その面でも驚きです。

 

 

  ●▲■ 禁酒運動の系譜、禁酒法を生き抜いた企業

 

いまでは到底信じられないけれど、
わずか100年ほど前、
禁酒主義、禁酒運動がアメリカ各地で盛んだった。

その歴史は古く、
ピューリタン(清教徒)が多いニューイングランド(北東部6州)では
1800年代初頭から禁酒運動があって、
それが全米に広がっていったそうだ。

アメリカ史上初めて、州レベルで禁酒法ができたのは
ニューイングランドの一つ、メイン州。
(つい先週の日経新聞に、
「メイン州で、アメリカ人がサケを醸造」
という記事が写真入りで載っていたが、隔世の感、である。)

1920年の全米の禁酒法施行時点では、
実に18州(当時は全米48州)で、
すでになんらかの禁酒法が制定されていたそうだ。

たとえば日本人移民の多かったハワイもそうだった。
当時ハワイでサケを製造していた「ホノルル日本酒醸造」他2社は、
全米禁酒法施行1920年1月16日以前の、
1918年6月18日から製造禁止命令を受けていた。

 

1920年から13年10か月続いた禁酒法は、
1933年にフランクリン・ルーズベルト大統領(民主党)が、
修正案に署名して、終了した。

当時の大統領選挙は禁酒法が主要争点(!)となったそうで、
ルーズベルト大統領は、禁酒法の改正を訴えて当選したのだそうだ。
(今から100年先の人たちは、移民政策や自由貿易が
2016年大統領選の争点だと聞いて、へえ、、、と思うかもしれない。)

 

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13年10か月以上、酒製造なしで酒造会社を存続させるなど、
至難の業だ。
しかし、バドワイザー、ジムビーム、ホノルル日本酒醸造などは、
実際にその年月を乗り切った。

しかも、酒製造を再開させて、今の繁栄に至るわけである。
(ホノルル日本酒醸造の銘柄「寶正宗」は、
現在も、宝USAに引き継がれて継続している。)

13年もたてば、酒製造の再開も容易ではない。
酒造無しに、酒造技師を何年も雇用し続けることも無いだろうし、
タンクや釜は錆び付き、ホースは朽ちていたろう。
この間、酵母の培養は続けていたのだろうか。。。

 

これらの会社の経営者の手腕には驚かされれるが、
たぶんこれは「酒造業ならでは(酒へのパッション)」であり、
酒造業以外では難しいのではないかとも思う。

禁酒法の間、ホノルル日本酒醸造がいかに生き残ったかなどは、
二瓶孝夫氏が1970・80年代の日本醸造協会誌に多少記しているが、
他のアメリカの酒造各社のことはあまり公になっていないと思う。
このことを調べれば経営学の博士論文が1本かけそうである。
(注)二瓶孝夫:国税庁醸造試験所出身。
アメリカとブラジルで清酒造りを指導。
後年、ホノルル酒造副社長。1994年ハワイで没。

 

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現在、イスラム教の多くの国々では禁酒であるが、
(モロッコ、エジプト、トルコなどは例外)
それ以外の国は、お酒産業があって、酒が飲めるのが当たり前。

しかし、アメリカの禁酒法以外にも、
欧米の国々でも禁酒の歴史があったようである。

 

以下、wikipedia「禁酒令」「禁酒法」からペースト。

  ロシアおよびソ連:  1914年から1922年まで禁酒令
アイスランド:      1915年から1922年まで禁酒令
(一般的な)ビールは1989年まで禁止
ノルウェー:        1916年から1927年まで蒸留酒禁止
1917年から1923年までビール禁止
フィンランド:      1919年から1932年まで禁酒令
スウェーデン:      1914年から1955年まで配給制度
米国ミシシッピ州:  1907年から1966年まで州法で禁酒

日本人が初めてハワイに移民した1860年代は、
まだアメリカに併合される前のハワイ王朝だったが、
当時のハワイ(カラカウア王朝)でも白人以外は禁酒だったそうだ。

 

 

  ●▲■ 予想外の展開はこれからも起こる、、、

 

アメリカの禁酒法は
「アルコール飲料の製造、販売、輸送、輸出、輸入」
を禁止た法律で、一見厳しいように見える。
しかし、どういう経緯か知らないが、
「購入、消費」は禁止と書いていなかった。

その結果、
シカゴにギャングのアルカポネが登場し、
ニューヨークでは禁酒法前に15,000だった酒場が
禁酒法以降かえって増えて
32,000のモグリの酒場が登場したといわれる。

また、アメリカ人が国境を越えて酒を飲みに行ったので、
カナダ、メキシコ、カリブ海の醸造所・蒸留所は大いに繁栄して
今の基盤を築いたそうだ。

禁酒法の影響も誠に予想外だといわねばならないだろう。

 

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トランプ大統領は予想外の政策を続けているけれど、
先日の新聞に、ほかにも「現在進行形の予想外」があったので
引用しておきます

大麻は、日本では娯楽用はもちろん医療用も認めていない。
同じくアメリカでも連邦法では違法だが、
カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州など現時点で9州が、
娯楽目的の大麻を州法で合法化しているそうだ。
(日経新聞、2月21日夕刊)

「すでに蔓延して追放が現実的でない」
「税収も増えるし乱用防止になる」
などが理由だそうだが、まことに予想外。

タバコはいまや世界的に規制が厳しくなりつつあるが、
大麻の規制が緩んでくるとは、、、
時代の先行きは、本当にわからないものである。

 

数年まえ、WHO(世界保健機構)が、
アルコール飲料が健康に有害だとして、
世界的に広告や販売時間、摂取を規制すべきだという指針を示している。
禁酒法の再来は無い(と心から祈る)にしても、
酒がタバコ並みに規制される時代が来るかもしれないことは、
酒類業界の経営リスクとすべきかもしれない。

 

                    text = 喜多常夫

(参考文献:wikipedia、「東京大学公開講座・酒」1976年、
二瓶孝夫「ハワイにおける日本酒・味噌・醤油の歴史」日本醸造協会誌1978年、
二瓶孝夫「続・ハワイにおける日本酒の歴史」日本醸造協会誌1985年)

 

 

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さて、情報紹介。

 

●▲■ ご紹介情報 その1:ROOTSディビジョン ●▲■
欠減が大幅改善、卓上ビール充填機「BF V」(3ページ)
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/BFV.pdf

全国のクラフトビールや、大手酒類企業の研究所で、
圧倒的シェアを誇るカウンタプレッシャ充填機「BF」が、
シリーズ「IV」から「V」にバージョンアップ。

ビールを60リットル充填したときの欠減が
「4リットル→1リットル以下」と大幅改善。
(典型的なガス含有量のアメリカンラガービールの場合、社内実験値)

スパークリング清酒やリキュールにも多くの採用実績があります。

 

 

●▲■ ご紹介情報 その2:K2デイビジョン ●▲■
合成コルクから植物コルクへ「ノマコルク」(6ページ)
http://www.kitasangyo.com/pdf/package/closures/nomacorc2017.pdf

石油由来のプラスチック原料から、
サトウキビ由来のバイオプラスチック原料に変更。
外観も、天然コルクと差がわからないレベルに。

ベルギーのノマコルク社の製品です。

 

 

●▲■ ご紹介情報 その3:K2デイビジョン ●▲■
サケびん口(一升壜口)規格のガラス栓「サケヴィノロック」(2ページ)
http://www.kitasangyo.com/pdf/package/closures/SVL.pdf

口内径20mmのサケびん口(一升壜口)規格に対応する
ヴィノロックを新しく開発。

チェコのプレシオサ社との共同開発です。

 

 

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