●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.197 ●▲■
     発行日:2014年7月29日(火)
  ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

------------------< 目 次 >------------------

●▲■ ニュージーランドのワイナリーで想ったこと ●▲■

 ●▲■ 「NZワイン輸出」と「日本酒輸出」の30年の相似性
  ●▲■ 「世界最南端のワイン産地」でみたワイン造り
  ●▲■ ワインのスクリューキャップ→キャップ産業について

                   (text = 喜多常夫)

ご紹介商品 ●1▲ ワインの「サクション・ワンド」
ご紹介商品 ●2▲ ワインの「亜硫酸測定器」(フランスLDS社製)
ご紹介商品 ●3▲ ワインの「卵形コンクリートタンク」

 

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5月にニュージーランドに行く機会があったので、
ワイナリーを見てきました。

ニュージーランドを地球儀で見ると、
日本の下、やや右寄りにある、南半球の島国。

日本と比較すると、
国土面積は70%程度(日本から北海道と四国を取ったくらい)あるが、
人口はたった3%(400万人強、北海道の人口より少ない)。

レンタカーで回ったのだけれど、
圧倒的に人口密度が低い=車密度が低いし、
日本と同じ右ハンドルなので不安なく走れる。
それに都市と都市を結ぶ国道はどれも単純1本道。
カーナビ不要の国である。

これほど少ない人口にしては
酒類産業はバリエーションに富んでいるというべきで、
ネルソンという街は
「南半球で最もクラフトビールが集積」しているそうだし、
首都オークランドにはなんと
芋焼酎の会社(銘柄名は「Mana Shochu」)もある。

 

しかしニュージーランドの酒類産業では、やはり、
ワインを第一とすべきでしょう。

ニュージーランドのワインは、
2000年代からソーヴィニヨンブランで名をあげた。
加えてこの5年ほどは
ピノノワールの品質の高さでも知られるようになりました。

 

 

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 ●▲■ 「NZワイン輸出」と
           「日本酒輸出」の30年の相似性 ●▲■

ワインは、
ニュージーランドの輸出品ランキングで8位だそうで、
いまやニュージーランドの重要産業。

 

nzwine.comによると、

 「2013年、ワインの輸出が初めて13億NZ$を超えた」
  (13億NZ$=1,040億円@2013年平均レート80円)

 

因みに、同じ島国、日本ではサケ輸出が急成長で、

  「2013年、清酒の輸出が初めて100億円を超えた」

というのが業界の話題だが、
NZワインのわずか1/10の金額規模にすぎないのがわかります。

 

ただ、NZワインのこの状況はここ四半世紀の変化の結果。
以前はまったく事情が違った。

60〜70年代のNZワインは、
当時の日本やアメリカのワインと同じく甘味果実酒中心だったそう。
本格的なワイン造りは1970年代半ばからというので、
案外そのころは日本のワイン産業と似たレベルだったのかもしれない。

当時のニュージーランドのワインは国内向け前提で、
輸出などほとんどなかった。

1981年で輸出がようやく2%。
だが、その後30年で、

    1981年:NZ国内:輸出=98:2
     1991年:NZ国内:輸出=88:12
2001年:NZ国内:輸出=65:35
2011年:NZ国内:輸出=30:70
(注:量による比率の推移)

という驚くべき推移で輸出比率は2%→70%となり、
いまやワインは国の重要輸出品目となったのです。

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ここで再度、日本のサケを連想します。

20世紀末(15年前)、日本の清酒はほとんどが国内向けで、
輸出は1%以下だったものが
21世紀に入って輸出が急成長。現在は3%弱。

足元ではアメリカ向け、韓国向けが対前年比でやや低調なようですが、
中長期的には輸出が伸びるのは間違いない。

 「今後30年の日本清酒の輸出比率は、
   過去30年のNZワインの輸出比率の推移と似たパスをたどる」
  (ただしサケとワインではマーケットの消費構造が違うので、
   変化曲線の角度は半分くらいだろう)

と、私は考えます。
すなわち、大胆に日本酒の今後30年を予測させてもらえば、

    2013年実績:日本国内:輸出=97:3
      (総生産330万石=国内321万石+輸出9万石)

    2023年予測:日本国内:輸出=94:6
      (総生産280万石=国内263万石+輸出17万石)

    2033年予測:日本国内:輸出=83:17
      (総生産300万石=国内250万石+輸出50万石)

    2043年予測:日本国内:輸出=65:35
      (総生産350万石=国内230万石+輸出120万石)

というのが個人的観測です。

ただ、清酒関係者のお叱りを恐れずに言えば、

    2013年実績:普通酒:特定名称酒=70:30
     2043年予測:普通酒:特定名称酒=0:100

は、上記30年予測(輸出比率拡大+総生産量反転増加)の
必要条件だと思います。

 

 

 

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 ●▲■ NZワイン産業概観と、
      「世界最南端のワイン産地」でみたワイン造り ●▲■

さて、ニュージーランドワインに話を戻せば、
統計上のワイン生産者は全土で692軒(2013年)。
21世紀に入って増加してきたが、ここ数年は700軒前後で安定。

(因みに人口が33倍の日本では、ワイン生産者数は1/3の223軒
  −当社ウェブサイトのワイナリーリストによる2013年現在の数字。)

692軒のうち609軒(88%)が年間200KL以下の小規模生産者。

(なお、日本のワイン生産者223軒のうち200KL以下は190軒(85%)ほど。
  200KLは26.7万本。日本だと多いが、世界基準では小規模。
  1本1,000円で売って、2億6,700万円の年間売上である。)

 

ほかに、ニュージーランドワインのちょっと変わった特徴は
日本人のオーナーやワインメーカー(=醸造責任者)が多いことで、
現在こんな方々がNZでワインを作っておられるそう。

サトウ・ワインズ、佐藤さん(←今回訪問!)
クスダ・ワインズ、楠田さん
コヤマ・ワイパラ・ワインズ、小山さん
キムラ・セラーズ、木村さん
フォリウム・ヴィンヤード、岡田さん
大沢ワインズ、大沢さん

 

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ワイン産地はニュージーランド全土に分散しているが、
今回訪問したのは、そのうちの最南端、すなわち
「地球最南端のワイン産地」である、
「セントラル・オタゴ」という地区。
ここは特にピノノワールで有名。

セントラル・オタゴは南緯45度。

北緯45度には、同じくピノノワールで有名な
米国・オレゴンのウィラメットバレーがある。
「緯度45度がピノ向き?」なのかもしれない。

なお、ボルドーやピエモンテが43〜44度、
ブルゴーニュは47度、シャンパーニュは49度。
我が北海道では、余市や空知が43度くらいである。

セントラル・オタゴは、
端から端まで車で2時間ほどの地域に
80軒ほどのワイン醸造所がある。

そのうち4箇所、

チャード・ファーム
マウント・エドワード
サトウ・ワインズ
アカルア

を巡って、ワインメーカー氏に醸造所内を案内してもらいました。
日本と季節が逆なので、
訪問した5月はワインの仕込みで忙しい時期。
時間を割いてくれたワインメーカー4氏にお礼申し上げます。

 

●▲■ eアカデミー資料 ●▲■
「醸造所訪問記・ニュージーランド・セントラルオタゴ・2014」
                         (9ページ)

 http://www.kitasangyo.com/e-Academy/wine/WJ_NZ.pdf 

詳しくは上記の写真資料でご覧いただくとして、
印象に残ったポイントを書きだしておきます。

●■「酸化環境でピノノワールを造る」
「好ましくない成分を早く酸化させてしまうほうがいい、
という考え方に変わってきた」といった発言を
2人のワインメーカー氏のからききました。
「酸化環境」とはすなわち、
「昔のやり方への回帰」ともいえます。
嫌気的環境の造り方に進んでいる日本との差を感じました。

●■「ピノノワールは「除梗」に「梗がついたまま」を混ぜる」
比率はワイナリーによって異なるが、
ホールバンチ(梗がついたまま)比率が2〜4割、
というのがセントラル・オタゴの標準的手法のようです。

●■「亜硫酸の使用は最小限に」
「ワイン造りの思想」(中公新書、麻井宇介著)を
読まれたワイン関係者、
薫陶を受けたワインメーカーは多いでしょう。
「亜硫酸をまったく使わない」NZのあるワインが、
技術的常識に反して品質が素晴らしく高く、
にもかかわらずその造り方はまったくシンプルであることが、
この本のプロローグとエピローグになっている。
麻井宇介さんが書いたのはNZ北島のワイナリーですが、
南島のセントラル・オタゴでもそんな作り方を目指す人がいました。
(NZで気付いたのは、空気が素晴らしく澄んでいること。
他の国のワイン産地でなく、そんなNZだからこそ、
亜硫酸を減らせるのかもしれないと思いました。)

●■「早飲みワイン、または、早期出荷ワイン」
この10年で急成長してきたせいか、
「去年のワインは今年中に出荷し、タンクや在庫は空にする」、
すなわち
「あまり貯蔵しないで売ってしまう」、
というスキームで運営しているワイナリーが多いようでした。
必然的に資金計画も、
今年分は今年売る、前提で考えているのでしょう。

●■「DIEMME−ディエメが圧倒的シェア」
今回見た4軒すべてが、
イタリアの「ディエメ」の醸造機器を使用していました。
ニュージーランド全土でもディエメが圧倒的なシェアなのだそう。
当然、機械性能の良さもありますが、ワインメーカーは口をそろえて、
「ディエメのエージェントのサポート体制がいいから」
と言っていました。
(ディエメは日本では当社が代理店。見習わなくては。)

●■「大型プラスチックコンテナでハンドリング」
日本のワイナリーではほとんど使われていないけれど、
アメリカのナパなどでは近年標準化された感のある
1000Lくらいの箱型プラスチックコンテナを使っている。
このコンテナをフォークリフトでハンドリングしている様子は
eアカデミーの写真資料3ページをご覧ください。

●■「スクリューキャップ+ブルゴーニュ型壜ばかり」
オーストラリアと同じくNZは
「スクリューキャップ国」(=コルク栓否定国)だと知っていたけれど、
壜のことは気にしていなかった。
あらためてよく見るとNZワインにボルドー型の壜は見当たらない。
なぜかほぼすべて、ブルゴーニュ型の壜である。
NZのワイン造りがボルドーのようなスタイルではなく、
ブルゴーニュに近い(ような気がする)ことが、
壜の選択に関係しているのかもしれません。
なお、今回見た4軒のワイナリーはどこも壜詰め機は持っていない。
びん詰め作業はすべて外注。
液体窒素滴下は行わず、窒素ガスパージのみということでした。

 

 

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 ●▲■ NZワインのスクリューキャップ
               →キャップ産業の話 ●▲■

NZワインを眺めていて初めて気付いたのですが、
ニュージーランドのワインのスクリューキャップは
「ナール(側面のギザギザ)なし」が結構多い。

帰国後、日本で売っているNZワインを見ても、
結構、ナールなしキャップのものがある。

キャップ製造業者としては、
握りやすいように
「キャップにはナールはあるもの」
という先入観をもっていましたが、
ナール無しでも特に開けにくい、ということはないですね。

人口がわずか400万人強のニュージーランドには、
キャップ製造工場などなくキャップはすべて輸入だったようですが、
2005年に「Guala−グアラ」という会社が「グアラNZ」を設立して、
ワイン用キャップの製造を初めたそうです。

たぶん、このグアラNZが、
「ナールなし」30x60キャップを製造しているのだと思います。

 

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あまりご興味がないかもしれませんが、
当方、キャップ製造業なので業界の話を少々記録しておきます。

グアラ、という会社は日本ではあまり知られていませんが、
ヨーロッパ中心に世界に22工場も展開しているキャップ製造業者で、
「ボール入り・リフィル防止キャップ」で有名な企業。
(中身入れ替え防止。偽造品が市場に出回ることを防止する目的)
有名ブランドのスコッチやウォッカで
日本以外のアジア市場向けや、アフリカ市場向けに良く使われているほか、
急成長した中国の白酒(パイチュウ、蒸留酒)でも多く使われる。

ワインで一般的な30x60サイズのキャップも製造しています。

グアラは今年(2014年)、東京に、
「グアラ・ジャパン」社を設立されています。
業界人としては
「いまさら日本にキャップ会社を設立するのは何故??」
と思いますが、、、

 

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日本のキャップ業界1位と2位は、

日本クロージャーさん(東洋製罐さんの傘下)
CSIさん(ニュージーランド!のRANKという会社の傘下)

この2社の売上は合計で600億円前後で、
日本のキャップ市場の8割程度のシェア。

3位以下の順位はつけづらいのですが中堅業者としては、

日本山村硝子さんのキャップ部門
三笠産業さん(独立系)
久金属さん(石塚硝子さんの傘下)
(恥ずかしながら)きた産業(独立系)

大手傘下の会社は、
親会社の本業より利益率が高かったりして、
みなさん、堅調に経営されています。
(再度恥ずかしながら、当社はそれほど堅調といえませんが。)

 

キャップ単体の販売はされていませんが、

凸版印刷さん
大和製罐さん
ユニバーサル製罐さん
吉野工業さん

などの大手も、自社容器用キャップ製造部門があります。

主要な包装資材(「ガラス壜製造」「PETボトル製造」「アルミ缶製造」など)
が軒並み苦戦している中、
ひょっとしたら、「キャップ製造」というのは、
金額規模は小さくても、
プロフィッタブルな包装資材産業なのかもしれないと思いました。

このたび日本に子会社を作ったグアラも、大株主が、
クレディ・スイス銀行(スイスとNYで上場する世界的銀行)だそうです。
儲けが見込める産業だから株を取得したのでしょうし、
儲からない市場だと、切り込んできたりはしません。

 

                   (text = 喜多常夫)

 

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さて、商品紹介をさせていただきます。

 

●▲■ ご紹介商品 その1:ROOTSディビジョン ●▲■

ワインの「サクション・ワンド」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/Suction.pdf

赤ワインを引き抜くのに使用します。
eアカデミーの写真資料4ページに登場している器具。

ただし、ずっと使いやすく出来ています。
アメリカTCW社製。

 

 

●▲■ ご紹介商品 その2:ROOTSディビジョン ●▲■

ワインの「亜硫酸測定器」(フランスLDS社製)
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/SO2_analyzer.pdf

亜硫酸測定を簡単に、きわめて短時間に行うことができる。

滴定をシリンジとステップモーターで行う機構で、
他社の亜硫酸測定機にくらべ正確な測定が可能。
滴定用「ヨウ素酸カリウム」以外は市販試薬で対応可能だし
プラチナ電極は保存液が不要で、ランニングコストも安価。

2014年8月18日、北海道大学で行われる
ASEV Japanで現物を展示する予定です。

 

 

●▲■ ご紹介商品 その3:ROOTSディビジョン ●▲■

ワインの「卵形コンクリートタンク」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/concrete_egg.pdf

通称、「コンクリートエッグ」。

ボルドー、ブルゴーニュはじめ、イタリア、アメリカなどの銘醸地で
多く採用されているのをご存知の方も多いと思います。

「角がまったくない内部空間」が
醗酵にも熟成にも独特の効果を生みます。
コンクリートによるマイクロオキシジェネーション効果や、
温度変化の少なさもポイントです。

小型の6.7ヘクトリットルをお勧めしています。

 

 

 

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