●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.182 ●▲■
     発行日:2013年8月5日(月)
  ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

------------------< 目 次 >------------------

●▲■ シングルモルトの聖地、アイラ島を訪問して

 その1:<ウイスキーと焼酎の比較小論>
     アイラ島vs奄美大島、アイルランドと沖縄、
     100%モルトと全麹、100年前の蒸留所数

                (text = 喜多常夫)

ご紹介情報 ●1▲高ガス含有の発泡清酒・発泡リキュールの製造法
ご紹介情報 ●2▲びん内二次醗酵スパークリングワインの製造法
ご紹介情報 ●3▲発泡清酒・発泡リキュール(びん内二次醗酵編)

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プライベートでロンドンに行くことがあったので、
足を伸ばして英国北部のスコットランドの西に浮かぶ小さな島、
「アイラ島」に行ってきました。

グラスゴーで小型双発機に乗り継いでいく人口3,400人の小さな島。
けれど、8つものウイスキー蒸留所が集積していて
「シングルモルトの聖地」といわれる島です。

「ボウモア」、「ラフロイグ」、「アードベッグ」など、
ウイスキー好きにお馴染みの銘柄がアイラの産。

 

見聞したアイラの蒸留所事情を書こうと思いますが、
その前にまず今回は、、、

「日本の焼酎とスコッチウイスキーの比較論」を書きます。

(焼酎とウイスキーの比較論は気になっていたのですが、
アイラ島で偶々鹿児島の焼酎メーカーの方々にお会いして、
改めてその類似と相違を調べてみようと思った次第。)

 

  ●▲■ アイラ島(8箇所)と奄美大島(10箇所) ●▲■

アイラ島に行かれた方は少ないと思います。
どんな島かをイメージしてもらうために、
日本の似た島と比較してみます。

アイラに比すべき島としてはむしろ、
「壱岐」(ウイスキーと同じ原料の麦焼酎の島)
をあげるべきかもしれませんが、
ここでは黒糖焼酎の「奄美」を取り上げました。

   ●アイラ島:モルトウイスキー蒸留所=8箇所

         面積=約6.2万ha
          人口=約3,400人
          最高気温の年平均=11.6℃

   ■奄美大島:黒糖焼酎蒸留所=10箇所

         面積=約7.1万ha
          人口=約66,000人
          最高気温の年平均=24.8℃

 

アイラと奄美は、人口や気候はまったく異なりますが、
同じくらいの面積の「蒸留所のある島」です。

何千キロも離れた洋の東西に蒸留所のある島があるのは偶然ではなく、
共通した地理的・歴史的背景があるからです。

   ●ウイスキー:発祥地=アイルランド(12世紀)
           伝わった先・現在の主産地
              =スコットランド(15世紀)
           地理的にその中間にある島
              =アイラ島(18世紀以前)

   ■泡盛・焼酎:発祥地=琉球・沖縄(15世紀)
           伝わった先・現在の主産地
              =薩摩・九州(15〜16世紀)
           地理的にその中間にある島
              =奄美諸島(後述※)

   ( )内は、ウイスキー造り、焼酎・泡盛造りが、
    始まった時期です。(菅間誠之助「焼酎のはなし」と
    土屋守「スコッチ三昧」を参照して時期を記載。)

アイラ島と奄美大島は、
「発祥地と主産地の地理的中間」という共通点があります。

それにしてもこうして併記してみると、
ウイスキーと焼酎の伝播の相似性が際立つと思います。
「スコットランドのウイスキー」と「薩摩の焼酎」は
似た時期(15〜16世紀頃)に始まっているのですね。

 ※奄美のサトウキビ栽培(黒糖の原料)の始まりは
   17世紀ですが、その時点では
   米などを使った泡盛(焼酎?)を造っていたそうです。
   黒糖焼酎の歴史は浅く、大戦下の食糧不足で始めたもの。
   ラムとの区分のため、酒税法では
   黒糖を原料にすることを認めていなかったので、最初は密造。
   戦後アメリカ占領下で黒糖焼酎の製造は続き、
   1953年に返還されたときに税務当局がその実績を認めて、
   麹の使用を条件に奄美諸島に限って認められた。
   今では熱心な黒糖焼酎ファンが多いのはご存知のとおり。

 

 

  ●▲■ アイルランドと沖縄 ●▲■

「アイルランドと沖縄」は、
ウイスキーと焼酎の「発祥地」であるけれど、
今ではそこから蒸留技術が伝播した先である、
「スコットランドと九州」が「主産地」となっています。

アイルランドは、長らく英国の支配下だったけれど、
戦後の1949年に念願の独立を果たした。
その結果、スコッチウイスキーとアイリッシュウイスキーは、
別々の国の産物になった。

琉球は、薩摩や清の影響が強かったとは言え、
長らく独立した琉球王朝だった。
しかし明治政府が1872年に「琉球処分」を行い王朝は消滅。
その結果、泡盛は日本の焼酎のカテゴリーの一部になった。

 

もしも、アイルランドが独立していなかったら、、、
もしも、琉球王朝が継続していたら、、、
アイリッシュウイスキーと泡盛、
そしてスコッチウイスキーと本格焼酎も、
相当違った発展をとげていたと思います。

(なお、戦前までの「アイルランドと英国」の関係はむしろ、
「朝鮮半島と日本」のそれと似ているでしょう。
そういった意味ではやはり、
朝鮮と日本の間に位置する「壱岐」とアイラ島の比較も、
興味あるところです。)

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100年ほど前(日本で言えば明治末年)の蒸留所数と、
現在の蒸留所数について、ウイスキー・焼酎の比較を書いておきます。

<100年ほど前の蒸留所数>→<2013年現在の蒸留所数>

  ●アイルランド:<200近い>→<4>
   ■沖縄:<148>→<50弱>

  ●スコットランド:<200くらい>→<100強>
   ■鹿児島:<485>→<100強>

  ●アイラ島:<たぶん10>→<8>
   ■奄美大島:<未調査>→<10>
   ■壱岐:<未調査>→<7>

   前掲の「スコッチ三昧」と「酒税関係史料集II」(税務大学校)
    などによる。「スコッチ三昧」出版から10年ほどたつので、
    アイルランドとスコットランドは実際は110年ほど前になる。)

アイリッシュウイスキーだけはいろいろな歴史的事情があって
極端に減っています。(つい最近1箇所増えて4箇所になった。)

しかし全体的傾向として、
蒸留所数の変化(≒産業構造の変化)は、
ウイスキーと本格焼酎とで似ていると思います。

ただ、この100年でウイスキー産業は大きく変貌しました。

100年前、焼酎・泡盛は
当時のことですから植民地需要やアジア向けもあったと思いますが、
地元需要・国内需要がほとんどであったと思います。
そして現在でも、焼酎・泡盛は「国内需要が99%」です。

ウイスキーは100年前の時点でもアメリカ向けが多かったものの
禁酒法時代(1920年代)に大打撃を受けます。
(スコッチよりむしろアイリッシュの打撃が大きかった)
しかしその後、戦後は外貨獲得の柱として、
また現在でも英国の主要輸出産業の一つとして
今では「国際マーケット」主眼の産業に変貌しています。

稿を改めて書きますが、
アイラ島のウイスキーも世界に向けて輸出され、
オーナー(蒸留所所有者)も国際的になっています。

 

 

  ●▲■ 原料、蒸留法、貯蔵の比較 ●▲■

  <原料>
    ■「オールモルト」・「全麹」■
       ・スコッチ・モルト(モルト100%)
       ・泡盛(タイ米の米麹100%)
       ・一部の本格焼酎(麦の全麹など)
    ■「糖化原料+主原料」■
       ・伝統的アイリッシュ(モルト+穀類)
       ・バーボン(モルト+コーン51%以上+穀類)
       ・スコッチ・グレーン(モルト+穀類)
       ・一般的な本格焼酎(米麹+芋や麦など)
    ■糖蜜や粗留アルコールなど■
       ・多くの甲類焼酎(香味のために5%未満の麦などを使う場合も)

  <蒸留方式>
    ●ポットスチル(単式蒸留器)●
       ・本格焼酎(1回蒸留)
       ・泡盛(1回蒸留)
       ・スコッチ・モルト(普通は2回蒸留)、
       ・アイリッシュ(3回蒸留)
    ●連続蒸留器●
       ・スコッチ・グレーン
       ・甲類焼酎

  <貯蔵ルール>
    ▲3年以上の樽貯蔵(シェリーやバーボンの古樽で)▲
       ・スコッチ・モルト
       ・スコッチ・グレーン
       ・アイリッシュ
    ▲2年以上の樽貯蔵(普通は新樽で)▲
       ・バーボンウイスキー
       ・コニャック(ウイスキーではありませんが参考に)
    ▲貯蔵を条件としない(貯蔵するものもある)▲
       ・本格焼酎
       ・泡盛
       ・甲類焼酎

こうやって分類すると、
本格焼酎の「全麹」は進むべきひとつの方向であることが
納得できるように思います。
「麦麹+麦(100%麦)」「いも麹+さつまいも(100%いも)」なども、
同じく有力な方向性でしょう。

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グレーンウイスキーは連続式蒸留器の発明の賜物。
日本の甲類焼酎のルーツ(新式焼酎)も、
明治に英国から輸入された連続蒸留器由来ですから、
ウイスキーと焼酎が似た構成になるのは当然かもしれません。

しかしいまや、
グレーンと甲類は相当異なった性格の商品。

グレーンウイスキーは樽貯蔵3年ルールも適用されるし、
原料はモルトとグレーン、そしてほとんどブレンド用なのだから、
スコッチウイスキーというカテゴリーで整合性が保たれている。

一方、甲類焼酎は、原材料から見てむしろ、
ホワイト・スピリッツに近いように思います。

 

話が少しわき道にそれますが、、、

甲類焼酎と合成清酒は酒類産業で大きな役割を果たしてきたし、
今も大きな需要がある酒類ですが、
今後「本格焼酎と清酒の海外展開」の上で、
その名称が混乱を招く場面が予測されます。

海外で、合成清酒風のものがSAKEとして流通することや、
粗留アルコールのSHOCHUが流通することを防止して、
日本ブランドのサケや本格焼酎を育成するために、
あるいは、今後の国内での両者のすみわけのためにも、
合成清酒や甲類焼酎(特に糖蜜や粗留アルコールだけの)は、
清酒や焼酎の名前を冠さない何かよい名称を
採用する時期ではないかと個人的には思います。
(業界の複数の方からも同様の意見を伺ったことがあります。)

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スコッチは密造時代に樽貯蔵が始まって以来、
いまやシェリー樽やバーボン樽で貯蔵することが必須。
「最低3年以上」といいながら、
シングルモルト用の場合など実際には10年以上が普通。
事業者にとって資金繰りの上でも大変な負担ではありますが、
スコッチにとって大きな付加価値となっています。

焼酎や泡盛では貯蔵が必須ではないけれど、
昨今は貯蔵した商品も多い。
ただ、酒税上の必要性(ウイスキーなどとの差別化)もあって
貯蔵しても色がついてはいけないのはご存知のとおり。

最近の業界ニュースで、
泡盛で「クース(古酒)」を名乗る場合、
現状「51%以上が3年貯蔵であればいい」ものを、
近々「100%3年貯蔵でなければならない」というルールに変更、
というのを聞きました。
泡盛独特の伝統技法「仕次ぎ」があるにせよ、
現代のマーケットに対しては正しい選択だと思います。

ウイスキーの場合、10年物といえば
ブレンドあるいはヴァッティングしてある原酒のうち
最も若いものが10年貯蔵。
もしも「51%ルール」だったとしたら、
スコッチの今日の世界的名声はなかったとおもいます。

スコッチのいろいろな厳しいルールは、
本格焼酎・泡盛の今後の国際展開にとって
学ぶべき要素が多々あると思います。(次号に続く)

                 (text = 喜多常夫)

 

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さて、情報紹介です。

●▲■ ご紹介情報 その1 ●▲■
高ガス含有の発泡清酒・発泡リキュールの製造法(全18ページ)
http://www.kitasangyo.com/e-Academy/Gas/data/sparksake_hico2.pdf

●▲■ ご紹介情報 その2 ●▲■
シャンパーニュ・びん内二次醗酵スパークリングワインの製造法(全21ページ)
http://www.kitasangyo.com/e-Academy/Gas/data/making_sparklingwine_ed6_2.pdf

●▲■ ご紹介情報 その3 ●▲■
発泡清酒・発泡リキュールの製造法・びん内二次醗酵編(全18ページ)
http://www.kitasangyo.com/e-Academy/Gas/data/SURSparkSakeBFmethod.pdf 

いずれもパワーポイントのスライドで構成した説明資料です。

スパークリングについては、

 清酒、ワイン、リキュール
  びん内二次醗酵、タンク内二次醗酵、ガス添加

など、多岐にわたる分野で実績とノウハウを持っています。

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