●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.180 ●▲■
     発行日:2013年4月26日(金)
  ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

------------------< 目 次 >------------------

<酒ブック紹介:その2>

●▲■ [ビール+麹+大阪+清酒+ワイン] ●▲■
   「ビールを極める」「麹のちから!」「上方“酒”ばなし」
   「日本酒の来た道」「千曲川ワインバレー」で5冊

                  (text = 喜多常夫)

ご紹介情報●1▲非接触の酸素(O2)濃度計「ノマセンス」
ご紹介情報●2▲「液体窒素滴下機」ビール・清酒・ワインへの適用
ご紹介情報●3▲「FOODEX」展示会報告:ありがとうございました!

 

 

 

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前回は居酒屋とウイスキーの本、4冊を紹介しました。
今回も酒ブック紹介の続き。あと5冊。

 

 ●▲■その5:「ビールを極める」 中谷和夫著
    2011年7月初版発行 双葉新書 838円+税

 

著者はサントリーの役員や上海サントリービール社長を務めた方。

  「入社当時のトップブランドで、
    今も残っているのはキリン・ラガーだけ
    そんな国は珍しい」

と書かれているように、日本のビールはめまぐるしく変遷してきました。

そんな変遷の荒波の中で近年大きくシェアを伸ばした
「プレミアムモルツ」の誕生の経緯、
そして、ビールの技術進歩や現代の技術開発について書いた本。
著者は泡技術の権威で、泡の解説やエピソードは特に興味深い。

 

個人的に印象深かったのは、
日本初の発泡酒、1994年発売の「ホップス」誕生のお話し。
日本ビール産業の今日の姿、
すなわち世界に類を見ない[ビール][発泡酒][第三]の三極体制の、
そもそもの始まりの出来事です。

きっかけは、佐治さん(サントリー2代目、技術系で当時会長)の

  「米を50%くらい使って
    清酒酵母でビールをつくったら」

というメモだったそうです。

「日本の」ビールの定義は昔も今も「麦芽比率2/3以上」ですが、
「米を50%くらい」=「麦芽比率50%くらい」ということ。

そして佐治さんメモの前段には、キリンが93年に発売した
「日本ブレンド」(米をたくさん使ったビール)があったそうです。

今では考えられませんが、
最初に誕生した「ホップス」の麦芽比率は、味重視で、
ビール基準(66.6%)からごく僅かに低いだけの65%だったそう。

それから20年、4社の競争→酒税の変更→酒税への対抗、
の繰り返しを経て、日本ビール産業は
   「ビールはシェア約50%」
   「発泡酒は麦芽比率1/4以下(最低税率)のみ」
   「第三のビール(発泡酒よりさらに酒税が安い)」
という三極体制に至ったのですね。

 

麦芽比率でもう一つ興味深かったこと。
世界で最も売れているビール、バドワイザーの、
アメリカの製造レシピは麦芽2/3以下(日本基準で発泡酒)なので、
日本での委託生産ではわざわざビール基準まで引き上げていたそうです。
(サントリーはかつてバドワイザー受託生産していた。今はキリンが受託。)

生産工程で「木片」を漬けこむことも初耳でした。
確かに、バドワイザーの缶の小さな文字をよーく見ると、
「Our Exclusive Beechwood Aging 云々」と書いてあります。

教科書にないビール知識、ビール業界知識を得られる一冊。

 

(独白:前回紹介のウイスキー本2冊からこの本まで、
  3冊続けてサントリーの方、あるいはサントリー出身者の著作。
  人を生み出す土壌がある会社なのだなあと感じます。)

 

 

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 ●▲■その6:「麹のちから!」 山元正博著
    2012年7月発行 風雲舎 1,429円+税

著者は、焼酎麹で有名な河内源一郎氏の孫。
身内しか知りえない事実で、

  祖父・河内源一郎の河内菌(黒麹、白麹)の発見
   父・山元正明(娘婿)の河内式製麹機や蒸留機の開発

を述懐。その経緯は焼酎産業史の一面として記録されるべき。

 「戦前の河内源一郎商店に良く働く韓国人の丁稚さんがいた。
   敗戦時に源一郎は「韓国にもって帰りなさい」といって
   河内菌をわたす。それがその後韓国で広まった。
   現代の多くのマッコリにも河内菌が使われる。」

と書かれていることも、記録すべき産業史でしょう。
(独白:前回、麹でつくるカナダのウイスキーのことを書きましたが、
  世界にある麹 - A.オリゼーや河内菌など - をつかう酒類・醗酵は
  すべて日本がルーツなのでしょうか。
  それとも日本とは無関係に、独自に、
  麹を使っている事例もあるのでしょうか、、、個人的疑問です。)

著者自身はある事情で1988年に河内源一郎商店と袂を分かち、
「錦灘酒造(焼酎)」「霧島高原ビール(地ビール)」
そして「チェコ村(テーマパーク)」を営むに至ります。

けれど、21世紀に入って麹に回帰、
麹の様々な研究に力を注ぐようになる。
麹の効用と応用技術がこの著作の大半を占めています。

例えば青カビはペニシリンを分泌して自分が生き残ろうとする。
抗生物質はじめ欧米で研究された有用菌はほとんど、
「自分だけ生き残ろうとする」そうです。ところが麹は、
「他の微生物を攻撃せず共生する」、故に、
「麹は愛の微生物」だと著者は記しています。

この本を読むと、著者自身も麹を愛しているように思います。
「麹屋3代目」を自称する血筋故なのでしょう。

 

ブームの調味料「塩麹」のことは勿論、
「健康への効用」として、

   花粉症・糖尿病・更年期障害への効果
    ストレスの抑制やNK細胞の活性化
    残留農薬のデトックス、など

「産業利用」として、

   養豚の臭い防止
    コンビニの食品残渣処理
    ケーキ屋さんの排水処理
    堆肥生産の効率化、など

多岐にわたる効果と様々な開発事例が解説されています。

ちょっと信じがたいほど優れた麹の効果や、
残留農薬や食品保存料のちょっと怖い実態は、
「学会誌に掲載を拒否された事もある」というのもうなづけますが、
麹のポテンシャルには感銘を受けざるをえません。

  「麹飲料を飲んで前立腺がんが消えた人がいて、
    それをきっかけにドリンク剤「前立腺の友」を商品化」

というエピソードも眉唾とおもう人もいるかもしれませんが、
私は「前立腺の友」(なんともストレートな名前!)を1ケース注文しました。

「国菌」=麹に対する認識を多いに改めさせられた一冊。

 

 

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 ●▲■その7:「上方“酒”ばなし」 松永和浩編著
   2012年10月発行 大阪大学出版会 2,000円+税

大阪大学付属の総合学術博物館というのがあるのですが、
そこで、昨年暮れから今年初めにかけて
「上方"酒"ばなし 先駆・革新の系譜と大阪高工醸造科」
という展示会がありました。

「大阪高工(大阪高等工業学校)醸造科」は、
「阪大醗酵工学科」の前身で、多くの酒類関係者を輩出しています。
(現在は「応用生物工学」に名前が変わっていますが、
再び「醗酵工学」がふさわしい時代ではないかと思います。)

本書はその展示会の解説カタログとして編纂されたもの。
今も書籍として入手可能。

展示会カタログだけに、前半は様々な図版や写真。
気軽に酒類業界知識を整理できる。

後半の文章部分は以下のような内容で、
大阪にスポットを当てた酒類産業史のトピックスを記述。

  ●伊丹、池田、灘の清酒造りの歴史
   ●吹田村のアサヒビール(大阪麦酒)巨大工場の出現
   ●赤玉ポートワイン時代の鳥井信治郎
   ●山崎ウイスキー蒸留所の開設の経緯
   ●竹鶴政孝(大阪高工醸造卒)の独立

また、大阪高工醸造科や阪大醗酵工学の卒業者の紹介もあって、
実業界ではこんな人が紹介されています。

  ●河内源一郎(焼酎麹、前掲の書評参照)
   ●本坊蔵吉(本坊酒造)
   ●長谷川勘三(ヤヱガキ酒造)
   ●佐藤卯三郎(新政酒造)
   ●小玉確治・小玉健吉(大平山)

 

ニューヨークとLA、北京と上海のように、
1国に2つの活力拠点があることは国を繁栄させる戦略である、
と私は思います。

東京集中でなく、
大阪(あるいは大阪・京都・神戸連合)の酒類産業が
再び日本をリードするようになってほしいと思います。
  (独白:きた産業も本社を東京に移さず、
   大阪本社を維持してます。
   微力ながら一層精進せねばと思いました。)

 

 

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 ●▲■その8:「日本酒の来た道」 堀江修二著
    2012年6月初版発行 今井出版 2,500円+税

醗酵学の泰斗、坂口謹一郎先生の著作にも
日本酒の歴史や古文書に詳しいけれど、
この著者は古い文献の実際の仕込み配合や製造工程を、
「実際につくるつもり」で詳細に調べています。

奈良時代、平安時代、室町時代、江戸時代、明治に至る、
色々な日本酒の仕込みの具体的重量kgが
    縦軸に「総米・蒸米・麹米・水」
    横軸に「?・初添・2回目・3回目」
という表形式で、30例以上掲載されている。
各工程間の日数や、温度管理の推定まで書いてある。

そしてその甘辛や味わいを予測し、
あるいは、実際にそのレシピで試験醸造まで行う。
よくぞここまで研究したたものと日本酒への熱意に驚きます。

 

 ●江戸末期に清酒が辛くなったのは砂糖が普及したからではないか。
   (1700年初頭まで砂糖はすべて輸入だったが、
   幕府が国産製糖を奨励、江戸末期には砂糖が豊富になった)
  ●アイヌと沖縄の両方に口噛み酒があった。
   両者とも眉やひげが濃いし、似た発音の言葉がある。
   ミトコンドリアDNAにも共通点があるので、
   遠く南北に分断されているが共通の起源の人ではないか。
  ●ビールは「麦芽」で糖化するが、
   お酒を(麹ならぬ)「稲芽」で仕込むのは難しい。

など、興味深かい記述も多くありました。
(独白:「稲芽」は、以前から個人的に疑問に思っていました。
  麦芽の糖化力の1/50くらいしかないので使えない、とのことですが、
  同じ穀類で糖化力がそんなに違っていても
  麦も米も種が発芽して同じようにスクスク育つ。なぜなんでしょうか。)

 

清酒の技術者にはとても参考になるだろう一冊。

著者は長く島根県産業技術センターで研究・指導をされた方で、
出版元の今井書店も山陰(鳥取)の会社。
このような素晴らしい成果がでてくる「山陰の力」にも感心。

島根・鳥取の日本酒を飲まねばならぬなあ、とも思いました。

 

 

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 ●▲■その9:ワイン
   「千曲川ワインバレー」 玉村豊夫著
    2013年3月発行 集英社 760円+税

「新しい農業への視点」というサブタイトル。
小規模なワイナリーを集積させて、
農業をベースにしたライフスタイルを根付かせたい、
という著者の思いを書きつづった本。

エッセイストで画家でもある玉村豊男さんが、
千曲川を望む山里で「ヴィラデスト」ワイナリーを初めてほぼ10年。
今、その周辺に新しく3軒のワイナリーができ、
さらに、将来ワイナリーを始めるため、
ブドウを植え始めたひとも何人かいるそうです。

 「ニュージーランドでは1990年に130のワイナリーがあったが、
   2012年には700を超え、近年は年30近くのペースで増えている。
   カリフォルニア、オレゴン、アリゾナでも、
   急激にワイナリーが増える局面があった。」
  「ワイン産業が新しくその土地に根づく地域では
   ある時点で一挙にワイナリーの数が増える局面がある。」

と書かれています。
長野の千曲川バレーはまさにその局面。

日本全体を見ても21世紀に入って、特区免許の小規模なものを含めると
年平均5〜6軒ものペースで新規ワイナリーが誕生しています。
日本全体としてもターニングポイントに来ているのだと思います。

「ワイナリーは初期投資が大きくすぐには儲からないけれど
数年後には必ず健全な経営ができる(!)」として、

  ■小さなワイナリーでも集積すれば、資材の共同輸入や
    共同ボトリングを行って経営基盤を安定させられる
   ■「千曲川ワインアカデミー」をつくるアイデア
    技術だけでなく「ワイン観光経済」講座も行う
   ■1億円以下の「ワイン醸造設備付き分譲住宅」や
    1〜2ha単位の「ヴィンヤード分譲地」はどうか

など、魅力的な発想で千曲川ワインバレーが語られます。

 

長野では、
かつて日本の輸出を支えたシルクのための桑畑・桑山が、
ブドウ畑になっている例が多いのだそう。

 「明治政府は殖産興業のため蚕糸とワインに力を入れたけれど、
   結局ワインは成功せず、蚕糸業が日本の近代化を支えた。」
  「明治維新が夢見たワインによる殖産興業が、
   百年の時を経て実現するかもしれない。
   シルク産業に代わってワインをつくる農業が
   未来の若者たちの糧になるかもしれない。」

ブドウ樹と桑の木は、奇しくも両方とも
「地面から拳をつきだしたような姿」だそう。
確かに不思議なつながりを感じます。

 

農業やワイナリーの可能性を感じさせられた一冊。
「TPP」や「6次産業」といった流行語(?)を
一切使わずに語られることにも説得力を感じました。

 「ニュージーランドのソーヴィニオンブランが、
   フランスのソーヴィニオンブランと
   違った個性を持っていることがわかって有名になったように、
   長野のメルローが、
   ボルドーやカリフォルニアのメルローと違うオリジナルとして
   世界に評価される可能性も多いにあるのです。
   ローカル品種にこだわるより、国際品種を与えられた土地でつくって
   独自の個性を表現するほうがやりがいのある挑戦ではないか」

という著者の考えも共感させられます。

                   (text: 喜多常夫)

 

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さて、情報紹介です。

●▲■ ご紹介情報 その1:ROOTSディビジョン  ●▲■

非接触・非破壊の酸素(O2)濃度計「ノマセンス」 (7ページ)
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/nomasense.pdf

ワインなどの酸素管理のためのツール。
栓を開封せずに壜内の酸素量を測定できます。

壜内二次醗酵スパークイング、サイトグラス内、
バッグインボックスの測定事例の写真も掲載。

資料内に小さく載せていますが
非接触の炭酸ガス(CO2)濃度計もあります。

関連情報:
合成コルク「ノマコルク」では2012年から酸素透過量を4段階選べる
「セレクトシリーズ」を発売していますが、
スクリューキャップ「ステルヴァン」も、
最近酸素透過量を4段階選べる新型ライナーを上市。
「酸素マネージメント」はワイン業界がますます注目するところです。

 

●▲■ ご紹介情報 その2:ROOTSディビジョン  ●▲■

「液体窒素滴下機」ビール・清酒・ワインへの適用 (7ページ)
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/LN2Doser.pdf

ラボ用、ビール、清酒、ワイン等での実績紹介資料です。
後半部分は、特にワインについての技術解説を詳しく記載。

きた産業は、20年以上にわたって
様々な分野で施工経験があります。
液体窒素技術のことならお任せください!

アメリカVBC社の液体窒素滴下機をご紹介しています。

 

 

●▲■ ご紹介情報 その3:K2ディビジョン  ●▲■

「FOODEX」展示会報告:ありがとうございました!(2ページ)
http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/FOODEX2013.pdf

先月、幕張メッセで行われたFOODEX国際食品・飲料展では、
多くの皆様に当社ブースにお立ち寄りいただきました。

お聞かせいただいたご意見・情報を、
提案に結び付けてまいります。

ありがとうございました!

 

 

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http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html

2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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2006年4月の以来、きた産業のトピックスを写真で収録。
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