●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.101 ●▲■
    発行日:2007年 7月18日(水)
  ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

  7月16日の新潟中越沖地震で被害にあわれた皆さんに、
   心からお見舞いもうしあげます。
   一日も早く、復旧されるようお祈りいたします。

 

------------------< 目 次 >------------------

●▲■「バイオ燃料総合展示会」を見て
                「モノローグ」と「個人的連想」入りの報告

  ●▲ 2方式、どっちつかず
          京都議定書の「京都」の名前が泣く、、、
   ●▲ 遺伝子組み換え酵母の規制
          鉄分で黄変しないお酒を作る酵母
   ●▲ キャッチフレーズの「カーボンニュートラル」は疑問
          炭酸ガスは結構出る、エネルギーはずいぶん使う
   ●▲ (食べ物ではないが)「地産地消」の勧め
          全国の清酒・焼酎メーカーがエタノールを作れば、、、

                             (text = 喜多常
夫)

ご紹介アイテム●1▲「PPキャップ」、環境にやさしいポリエステル塗装
ご紹介アイテム●2▲単一素材で環境に貢献、「オールプラスチック替栓」

 

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先週末に横浜で、
「バイオ・フューエル・ワールド―日本初!バイオ燃料総合展示会」
という展示会があった。
東京出張にちょうど重なっていたので、足を伸ばして見てきた。

アルファラバル、ウェストファリア、サッポロエンジ、日阪製作所など、
醸造機器分野でも有名な企業も出展していて、
酒造産業・醗酵産業とバイオ燃料とのつながりを感じる。

ただ、第一回ということもあってか出展企業はごく少なく、
実際にはカンファレンス(会議・講演会)の要素が強かった。

プログラムによれば、環境省や農水省、トヨタや日産、
京大や産業技術総研など内外の大学や研究機関、
石油連盟や地方行政やバイオエタノール関連企業、
わが業界ではサッポロとアサヒ、など講師はそうそうたるメンバー。

数十本ある講演のうちたった4本しか聞けなかったが、
印象的だったことを、
「モノローグ(独白、素人意見だが)」と「個人的連想」入りで書いてみる。

 

  ●▲ 2方式、どっちつかず ▲■

ある講演のあと、外国人の参加者から、
「バイオフューエルにはたいへんなお金がいる。
国の方針が決まっていないと民間は投資に踏み切りにくい。
日本はETBEにいくのか、直接混合(E3)にいくのか?」
という質問があった。

新聞でも度々話題になることだが、日本は2方式並立である。

石油連盟(国交省も?)がETBE(エタノールを加工してからガソリンに混合。
メリットもあるが化学物質として環境負荷の懸念がある)を推進していて、
既に4月から首都圏のガソリンスタンドで発売している。

一方、大阪、沖縄、北海道などで始まっている
民間の国産バイオエタノール製造プロジェクトは
E3(エタノール3%をガソリンに直接混合)を推進していて、
こちらは環境省、農水省、経産省(の一部?)が後押ししている。

そんな状況を知る日本人には回答に窮する質問である。
講演者と質問者のやり取りのあと、司会者が次のように付け足していた。
「2010年の政府目標は50万キロリットルですが、
その目標が”達成されていれば”
ETBEが20万キロリットル、E3が30万キロリットルでしょう」

  〜モノローグ〜 外国の方の、ごくまっとうな質問を聞いて、
   改めて、日本の現実に情けない思いだった。
   バイオエタノール利用拡大という世界的な動きのなかで、
   石油業界と環境省が対立しているようでは、普及もおぼつかない。

  バイオエタノール生産・利用で、
   ブラジル、アメリカはもちろん、
   ヨーロッパ、中国にも後塵を拝している日本が、
   狭い国土でETBEかE3かの方針さえ決めきれないのでは、
   ますます遅れを取るだろう。

  〜個人的連想〜 少しニュアンスは違うが、、、
   日本には西日本60Hz東日本50Hzと電気に2つの規格があり、
   (そんな国はほかにない)、電圧(100 &200V)も比較的特殊である。
   当社のような規模の会社でさえ、醸造機械や充填機械を輸入するとき
   2方式どちらにするのか、どう適合させるかでコストやリスクが伴い、
   なにかと日本は不利である、そんなことを連想した。

  それにもう一つの連想、
   新聞でよく報道されることだが、
   携帯電話方式が世界の主流と違う日本独自方式なので、
   日本の携帯電話メーカー(シャープ、松下、NECなど)が
   世界市場でノキア、サムスン、モトローラにいまや全く歯が立たないこと、
   いま世界で大流行のアップルのi-phoneも日本では使えないこと、
   も、想起した。

  規格を統一すること、世界に通用する規格であること、
   は、とても大事な国家戦略だと思う。

  京都議定書に参加していないアメリカのほうが、
   はるかにはっきりした戦略が出来ていて、
   何年か先、トウモロコシをフルに使い切ったあとの生産量拡大ために、
   セルロース系のバイオエタノールに乗り換えていくための
   大規模実証プラントも既にいくつか出来ているそう。

  一方の日本はといえば、「京都議定書による政府目標である
   2010年の50万キロリットル達成は疑問視している」
   という講演者が多かった。

  京都議定書の「京都」の名前が泣くなあ、と思った。

 

  ●▲ 遺伝子組み換え酵母の規制 ▲■

バイオエタノール生産の「第一世代」は、
サトウキビ(砂糖)やトウモロコシ(澱粉)から作る方法。
簡単に醗酵するので効率はいいが、食料との競合が難点。

そこで、木材など(セルロース)から作る「第二世代」が注目株である。
大阪の堺市で稼動し始めた設備も廃木材からアルコールを作るものだが、
木質は糖化やアルコール発酵が困難な成分が多いので
前処理に硫酸を使用する。

しかし、硫酸ではいかにも環境負荷が高いので、
硫酸を使わない方法が世界中で研究されている。
まさにその、「木質バイオエタノール脱硫酸生産技術」という講演を聞いた。

通常では発酵しにくい、キシロース(5炭糖)を醗酵させる
「遺伝子組み換え酵母」の開発・利用が一つのポイントのよう。

講演の後、素人ながら気になって、次の質問をした。
「その場合の遺伝子組み換え酵母の使用制限は?
食品利用の場合は規制もあるし否定的風潮だけれど、
バイオエタノールではある程度自由に利用できるのですか?」

「遺伝子組み換え生物は外気に放出してはいけません。
バイオエタノール工場ではバッチごとに滅菌する必要があるでしょう」
という回答。当然といえば当然、食品もその他も同じである。

  〜モノローグ〜 バイオエタノールが商業生産になったとき、
   遺伝子組み換え酵母を、
   実験室でやるようなレベルで隔離するのは至難ではないか、と思う。

  一方、遺伝子組み換え作物が自由なアメリカでは、
   バイオエタノール生産でも遺伝子組み換え微生物にたぶん寛容で、
   酵母の再利用など当然、と思っているのではないか。

  遺伝子組み換え生物の管理が甘いのは困りものだが、
   バイオエタノール生産コストの彼我(ひが)の差は
   ますます広がるのだろうな、と思った。

  〜個人的連想〜 話はそれるようだが、、、
   清酒は鉄イオンがごく僅かでもあると黄変する厄介な性質がある。
   2−3年前のお酒の研究業績発表会で、
   「鉄分で黄変しないお酒を作れる酵母を作った」
   というのを聞いたことがある。ただし、
   「遺伝子組み換えなので商業利用はできない」
   とのことだった。

  お酒が鉄イオンに過度に敏感でなくなると、たとえば、
   酒タンクに通常のステンレス(高価なSUS316でなく304など)が使えるし、
   業界全体の原価低減に貢献するのになあ、と思った記憶がある。
 
   遺伝子組み換え生物の管理は十分にしなければならないが、
   いまの世界の状況を考えると、
   管理レベルを再検討する余地があるかもしれない、と思った。
   一方で、どこまでが遺伝子組み換えで、どこまでが遺伝子選抜かも
   あいまいになってくるかもしれない。

 

●▲ キャッチフレーズの「カーボンニュートラル」は疑問 ▲■

99.5%以上の純度にするために、
通常は蒸留工程を経る(膨大な熱エネルギーを使う)バイオエタノールは、
果たして本当に炭酸ガス排出が少ないのか?効率的なのか?
個人的に、以前から疑問に思っていた。

「バイオマス燃料開発および供給の課題」
という講演(京大名誉教授、池上氏)にその疑問に関するチャートが出てきた。

「WTW」というチャートで、Well to Wheel(油井から車まで)という意味だそ
う。
ガソリンや軽油、各製法のバイオエタノールが自動車に利用されたとき、
走行距離あたりの「エネルギー要求量」と「CO2ガス排出量」が
横軸・縦軸にプロットしてある資料である。

  〜モノローグ〜 このWTWチャートによれば、エネルギー要求量は、
   ガソリンより、バイオ燃料が2〜3倍多い! とても驚いた。

  専門家に言わせれば、当然の事実、ということかもしれないが、
   エネルギーをより多く消費する方式に向かっていっていいものなのか。
   いまや世界中がバイオ燃料に向かっているが、
   素人ながら少々心配になった。

  エネルギーをたくさん使っても
   CO2ガス排出が少なければいいのかもしれないが、
   WTWチャートによれば、なんと小麦で作ったバイオエタノールなど、
   CO2ガス排出量もガソリン・軽油と大差ない。

  チャートを詳細に見ると、木質バイオエタノールや、
   木質フィッシャートロピッシュ法(今後注目される手法だそう)は
   明確にCO2ガス排出量が少ないのは救いであるが。

  新聞解説でなども時々登場するが、
   「カーボンニュートラル」がバイオフューエルのキャッチフレーズ。
   素人にも説得力がある。
  
   「光合成で炭酸ガスを吸った植物を燃やすのだから、  
   炭酸ガス排出がプラマイゼロ」という意図であるが、
   そんなキャッチフレーズを使うのは慎重にすべきではないかと思った。

  これからの子供たちの世代が、
   「バイオフューエルなら炭酸ガスが増えない」
   と誤解して育つと大変だ。

(WTWチャートは写真に撮ったので、7月17日付けブログに掲載しておきまし
た。)
http://blog.goo.ne.jp/kita-slow_blog

 

●▲ (食べ物ではないが)「地産地消」の勧め ▲■

池上教授の講演でもう一つ、ヒントになる、と思ったことがあった。

「地産地消のバイオディーゼル燃料」というスライド。
バイオエタノールでなく、軽油に混ぜるバイオディーゼルは
食用油の廃油などから全国各地で作られ始めていて、
B5(5%混入)までは普通に使えるそう。
全国バイオディーゼル利用促進協議会というのも出来ている。

  〜モノローグ〜 「バイオディーゼルの地産地消」ではなく、
   「バイオエタノールの地産地消」というのは、ありではないか?

  エタノール生産は小規模だとコストが合わない、
   タンカーでブラジルからエタノールを持ってくるほうが安いから、
   という理屈もわかるが、
   エネルギー安全保障や、激変する地球環境のリスクを考えると、
   地域で小規模生産するのは意味があるように思う。

  日本のアルコール発酵産業といえば清酒や焼酎のメーカー。
   全国各地に2千数百社ある。
   仮に2500社が100キロリットルずつエタノールを作れば
   政府目標50万キロリットルの半分がまかなえる。
   清酒メーカー・焼酎メーカーも新しい活路が開ける。

  アルコール純度99.5%以上、というのが大きな障害だが、
   事情通に「実は60〜70%でも車は走るよ」と聞いたこともある。

  「ブラジル型」(サトウキビで国内燃料をまかなう)、
   「アメリカ型」(トウモロコシ利用で世界制覇のエネルギー戦略)、
   とは全く異なる、「日本型」=「地産地消のバイオエタノール」
   というのは、案外、画期的モデルになりはしないか!

  食料自給率がこんなに低い国になってしまった反省もこめて、
   「地産地消のバイオエタノールでE50」、くらいになれば、と思う。

                          (text = 喜多常夫)

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さて、当社製品の紹介です。

●▲■ ご紹介アイテムその1:KKディビジョン ●▲■
「PPキャップ」、環境にやさしいポリエステル塗装
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/closure/PPCap.html

当社では、ほとんどすべてのPPキャップについて、
ビニール系塗装から、
環境にやさしいポリエステル系塗装への切り替えを終了しました。
(一部指定仕様などを除く)

また、昨年から増設を進めてきた新ラインが大阪工場で稼動し、
お酒で一番ポピュラーな30mmスタンダードPPキャップの供給能力を
約30%増強しました。

PPキャップのことならお任せください。

 

●▲■ ご紹介アイテムその2:KKディビジョン ●▲■
単一素材で環境に貢献、「オールプラスチック替栓」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/closure/allplaKS.PDF

一升びんの中栓を、すべてプラスチックにしたものです。
金属とプラスチックの複合材だった従来品に比べて、
環境にやさしい構造です。

小規模生産ラインながら、こちらも生産能力を増強しました。
営業担当にご照会ください。

 

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●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」

http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html

2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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